日本耳鼻咽喉科学会は15日に難聴と認知症・うつ病の関係について国際シンポジウムを開き、小川郁副理事長は、2015年に国が策定した認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)で、危険因子に難聴が記載されたことを評価した上で、「防御因子に補聴器装用を盛り込むことを提言したい」と述べた。
シンポでは、エレナ・アミーバ氏(仏ボルドー大)が、補聴器装用が認知機能低下を抑制する傾向があるとしたフランスの前向きコホート研究を紹介。ただしエビデンスは不十分で、さらなる研究が必要だとした。
これを踏まえ、参議院議員の武見敬三氏は「科学的エビデンスがすべて揃わないと政策ができないということはない」と強調し、「法律上、障害者にならないと国から補助を受けられないことは問題で、早急な政治判断が求められている」と指摘。解決には、地域医療と補聴器販売ネットワークの連携や、認定補聴器技能者(用語解説)など資格者の質・量の底上げが必要だとした。
一方、うつ病については小川氏が、特に男性難聴者では健聴者に比べて約3倍リスクがあるとした群馬県における高齢者の前向きコホート研究を発表。「補聴器装用でうつ病を予防できる」と強調した。