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【他科への手紙】循環器内科→整形外科

No.4841 (2017年02月04日発行) P.53

神吉秀明 (さいたま市立病院循環器内科科長/慶應義塾大学医学部客員講師(内科学))

登録日: 2017-02-03

最終更新日: 2017-01-31

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  • 本日は、心疾患を持つ患者の手術についての話をさせて頂きます。高齢化社会を迎え、整形外科の先生方も多くの高齢者を治療されていますが、中には心疾患を合併している患者も多数いらっしゃると思います。しかし、すべての心疾患が事前にわかっているわけではなく、重篤な心疾患が気づかれずに隠れていることもあります。貴科で手術が必要になった際、心疾患は大きなリスクとなりますが、だからと言ってすべての術前に心臓の精査をするわけにもいかないでしょう。

    そこで、整形外科の先生方にご理解頂きたいのは、心電図と聴診の重要性です。心電図では、陳旧性心筋梗塞や虚血性変化などに目を奪われがちですが、ぜひ左室肥大にもご注意頂きたいと思います。また、聴診では収縮期雑音がないかどうかを確認して下さい。高齢者に左室肥大と収縮期雑音がある場合、注意すべきは大動脈弁狭窄症です。

    この病気は、加齢により大動脈弁が硬くなり開口障害をきたすもので、患者本人は気づかないまま徐々に進行します。胸痛・失神・心不全といった症状が出はじめた頃には既に重度狭窄になっており、突然死の危険が出てきますが,この状況になっていても気づかずに生活している高齢者も少なくありません。大動脈弁の狭窄があった場合、通常の麻酔や薬物投与を行うと重篤な血圧低下をきたしたり、心不全を惹起したりすることがあるため、麻酔は十分にトレーニングされた麻酔科医師が行うべきです。喫緊の手術でなければ、重症度によっては大動脈弁狭窄症の治療を先行させることをお勧めする場合もあります。大動脈弁狭窄症は本当に怖い病気です。

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