【質問者】
井上 学 国立循環器病研究センター脳血管内科
脳梗塞急性期の経口抗血栓療法に関する質問について,抗血小板療法と抗凝固療法にわけて説明します。
(1)抗血小板薬2剤併用療法
抗血小板療法については抗血小板薬2剤併用療法(dual antiplatelet therapy:DAPT)が急性期の非心原性脳梗塞に有効であるという約5000例の報告(CHANCE研究)が中国から2013年に発表され,話題になりました。クロピドグレル硫酸塩とアスピリンの3週間併用が,アスピリン単剤よりも脳梗塞再発が少なかったという報告でしたが,対象が一過性脳虚血発作と軽症脳梗塞症例だけで,加えてわが国の感覚からするとDAPT群でも再発率がかなり高いので,広く非心原性脳梗塞全体で有効なのかはまだ断言できません。またサブ解析で,東アジア人に多い遺伝的にクロピドグレル硫酸塩の活性型への代謝が遅い人では,DAPTの効果が認められなかったとの報告があり,発症直後にこの体質が迅速解析できるかということも今後の課題です。ほぼ同様のプロトコールで,DA PTの期間が3カ月と長いPOINT試験が北南米を中心に進行中ですので,両者の統合解析の結果にも注目しています。
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