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【書評】『プライマリケアで一生使える耳鼻咽喉科診療』

No.4850 (2017年04月08日発行) P.74

寺澤秀一 (福井大学名誉教授)

登録日: 2017-04-07

最終更新日: 2017-04-04

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私どもの門下生となり、耳鼻咽喉科専門医から「耳鼻咽喉科に強い総合医」に進化した高橋優二先生が、彼の仲間とともに「非耳鼻咽喉科医のための耳鼻咽喉科診療」をまとめて出版しました。

内容は浅からず深からず、量も多すぎず少なすぎず、ちょうど良い加減です。非耳鼻咽喉科医の立場ではどこまでの知識が必要なのか、緊急性の判断をどうするのか、どの時点で耳鼻咽喉科医に紹介するべきなのか、転送までに何をするべきか、紹介できないときにはどのような対応が可能なのか…等々、アカデミックかつプラクティカルです。また、カラー画像やイラストをふんだんに使用して、読む医師の立場になってわかりやすくまとめられています。耳鼻咽喉科医がプライマリケア医からよく訊かれる質問をQ&Aとして記載してあるのも、心憎い工夫です。

家庭医、総合医、ER型救急医など、今後の日本にとって重要な横断的診療をされる先生方にとって必携の一冊となるでしょう。また、医学生にどの深さまで講義をしたらよいか悩んでいる耳鼻咽喉科の教員方にとっても、良い指針となる書です。

皆、自分の領域の専門医をめざす専攻医や研修医の教育には熱心です。一方、他科の医師や他科をめざす研修医に上手く教えることはできません。言い方を変えると、自分の専門領域を他科の医師達に教えても意味がないと勘違いしているのです。しかし私は、他科の医師達への教育を熱心に行うと、結果的に自分達がより専門医らしく働けるようになるばかりか、自分の専門をめざす仲間も増えると確信しています。

自分の専門領域を他科の医師達に教えるときに最も重要な点は、その深さの調節です。専門医はどうしても自分の領域について他科の医師達にも深く教えようとして、彼らの学ぶ意欲をそいでしまいます。この点を考慮して、適切に書ける医師はまだまだ少ないのが現状ですが、本書の若い著者達はそれを見事に成し遂げています。まさに快挙です。

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