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黄色痰から病状をどうみるか?【マクロライド維持療法の適応と考えられる】

No.4852 (2017年04月22日発行) P.60

新海正晴 (横浜市立大学大学院医学研究科呼吸器病学准教)

登録日: 2017-04-18

最終更新日: 2017-04-17

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  • 75歳,男性。2年ほど前より毎日2時間くらい,少量の黄色痰が出現しています。CTで右肺中葉末梢に気管支拡張性変化と周囲肺野の濃度上昇を認め,気道炎症が疑われています。左肺上葉舌区末梢にも軽微ではあるものの,同様の変化が存在しています。咳痰中結核菌(-),非結核性抗酸菌(-)。血液検査でもCRP 0.05mg/dL以下,蛋白分画は正常。慢性副鼻腔炎の併存はなし。
    毎日,体位の工夫と意識的咳嗽で排痰を心がけています。しかし,1年ぶりに胸痛を伴う急性感染を起こしました。スルバクタムナトリウム・アンピシリンナトリウム(スルバシリン)3g×3回/日の点滴4日間で改善しました。その後,黄色痰は出なくなっています。
    (1)黄色痰が毎日出るということは,体温,体調,血液に異常がみられなくても何らかの細菌感染があると考えられるでしょうか。パラインフルエンザウイルス(human parainfluenza viruses:HPIVs)が2回出たことがあります。この場合,気管支拡張は進展していく可能性がありますか。
    (2)抗菌薬としてではなく,気道の慢性炎症病態を改善させることを目的として行われるマクロライド系抗菌薬長期投与で,肺炎を含む感染症の罹患率を低減させることができますか。また,気管支拡張症の進展を抑制できるでしょうか。さらにその他のメリットもお示し下さい。
    (3)マクロライドは腸内細菌には影響が少ないと思われますが,その細菌叢の乱れによって,全身の免疫力が低下する可能性はないでしょうか。また,その他の副作用についてご教示下さい。

    (静岡県 M)


    【回答】

    (1)気管支拡張が進展していく可能性

    気管支拡張症,慢性好中球性気道炎症の急性増悪の症例と考えます。ご指摘のように,CTで右肺中葉末梢,左肺上葉舌区末梢に気管支拡張性変化と周囲肺野の濃度上昇を認め,黄色痰が抗菌薬投与により消失していることから,インフルエンザ菌をはじめとした微生物の定着および感染があると考えます。非結核性抗酸菌感染症の否定のために,気管支鏡洗浄による菌検索を実施することをお勧めします。

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