敗血症は感染によって惹起された全身性炎症反応症候群とされ,肺,胆道,尿路系などの重症感染症に起因することが多い。また,熱傷や頭部外傷などの重症外傷に続発することもある。
法医解剖においては,死後変化があるため敗血症の診断は難しい。剖検時に採取された血液培養検査でコンタミネーションや腸内細菌などの腐敗細菌・常在細菌の混入があり,有意な結果が得られることは少ない。病理組織検査で肝臓,腎臓,脳などに,菌による微小膿瘍や脾臓の急性炎症があれば確定するが,所見が取れる病理組織標本が作製できないこともある。
近年,法医学領域では比較的死後変化を受けない血液検査項目が研究され,法医診断に使われている(HbA1c,CRP,BUN,Creなど)1)。臨床では敗血症の血液マーカーとして,プロカルシトニンやプレセプシンが使用されている。法医解剖症例でもプロカルシトニンの死後変化について検討され,室温で比較的安定,半減期も長い(25~30時間)ことが報告された2)。法医診断における敗血症のマーカーとしての有用性も報告されている3)。今後,さらに検討が進み,広く用いられるようになると思われる。
【文献】
1) Uemura K, et al:J Forensic Leg Med. 2008;15 (5):312-7.
2) Tsokos M, et al:Int J Legal Med. 2001;114(4-5): 237-43.
3) Palmiere C, et al:Int J Legal Med. 2012;126(2): 199-215.
【解説】
上村公一 東京医科歯科大学法医学教授