全身性強皮症(以下,強皮症)は自己免疫を背景に,皮膚および内臓諸臓器の線維化,血管病変によって特徴づけられる膠原病である。本症の90%以上に自己抗体が検出され,また,各自己抗体は相互排他的であり,臨床症状との相関が非常に強いのが特徴である。抗RNAポリメラーゼ抗体1)は強皮症の約5%に検出され,本抗体陽性の強皮症の皮膚硬化は比較的急速に進行し,皮膚硬化が広範囲に及び,拘縮をきたしやすいという特徴を有する。間質性肺炎の合併率が低く,かつ軽症である。
しかしながら,本抗体陽性例は腎クリーゼの合併率が高く,治療が遅れると透析導入となるため,ACE阻害薬による治療をすぐに開始する必要がある。特に抗RNAポリメラーゼ抗体のELISA index高値群では,低値群と比べ有意に腎クリーゼ合併率が高い2)。また,近年,本抗体陽性の強皮症では悪性腫瘍の合併率が20~30%と,ほかの抗体陽性例よりも高頻度であることが報告されており,変異RNAポリメラーゼが悪性腫瘍に表出され,自己免疫を誘導し,強皮症の発症誘因となっている可能性が示唆されている3)。
【文献】
1) Kuwana M, et al:J Clin Invest. 1993;91(4): 1399-404.
2) Hamaguchi Y, et al:Arthritis Rheumatol. 2015; 67(4):1045-52.
3) Joseph CG, et al:Science. 2014;343(6167): 152-7.
【解説】
松下貴史 金沢大学皮膚科講師