【質問者】
長根百合子 総合花巻病院神経内科主任医長
2016年,MG・非胸腺腫例に対する胸腺摘除術に関する無作為割り付け試験(MGTX,2006~12年,全世界36施設参加)の結果が公表されました。この結果は,2000年のGronsethらのメタアナリシスから生じた「MG・非胸腺腫例に対する胸腺摘除術が有効であるというエビデンスは明確でない」という提言に対する回答に相当します。
方法は多施設共同・単盲検法で,対象は発症後5年未満の血中抗アセチルコリン受容体抗体陽性患者(MGFA Ⅱ~Ⅳ)126例でした。これらを胸腺摘除術と経口ステロイド(プレドニゾン)投与を行う併用治療群と,プレドニゾン投与単独治療群に無作為に割り付け,3年間の試験を行いました。両群とも,主に早期発症〔発症年齢中央値,32歳(18~63歳)と33歳(18~64歳)〕,発症後比較的早期〔罹病期間中央値,1.08年(0.02~4.41年)と1.14年(0.15~4.38年)〕の症例です。
結果は,胸腺摘除術併用群の患者はプレドニゾン投与単独群の患者よりも,①QMGスコアが改善(6.15 vs. 8.99,P<0.001),②プレドニゾン必要量が減少(1日量で22mg vs. 30mg,P<0.001),③アザチオプリン追加を要する例が少なく(17% vs. 48%,P<0.001),増悪で入院する例も少なかった(9% vs. 37%,P<0.001),などというものでした。以上より,MG・非胸腺腫患者では,胸腺摘除術を行うことで3年間の臨床転帰が改善したと結論づけました。
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