(東京都M)
骨粗鬆症は「骨強度が低下して骨折のリスクが高くなる全身性骨疾患」で,骨密度は骨強度をよく反映します。このため骨密度が骨粗鬆症の診断に広く利用され,診断基準では診断の目安となるカットオフ値が設定されています1)2)。たとえば,脆弱性骨折の既往がない場合,骨密度が若年成人平均値(young adult mean:YAM)の70%以下になると骨粗鬆症と判定されます1)。
骨粗鬆症診断に骨密度を用いる際の注意点の1つは,測定部位により評価結果が異なる場合があることです。骨粗鬆症では全身の骨格で骨量減少が起こりますが,同じ人でも最大骨量は部位による差があり,骨量減少速度も年齢や個体により異なります。このためたとえば,橈骨の骨密度は正常域の判定でも,腰椎は骨粗鬆症域という結果が生じる可能性があります。そこで,診断基準では臨床的重要度が高い脊椎や大腿骨近位部の骨折リスクを最もよく表す腰椎と大腿骨近位部の骨密度による判定をgold standardとしています1)2)。
DXA法で得られた骨密度の結果から骨の脆弱性を判断する際には,測定に関わる誤差要因にも注意が必要です。高齢になると脊椎の退行性変化による骨硬化や椎体変形の頻度が増加します。こうしたケースでは,骨の脆弱化が強いにもかかわらず,DXA法による骨密度は少し高めになります。骨折によって椎体が圧壊した場合や腰椎と大動脈壁の石灰化が重なった場合も同様です。したがって,このような場合は骨硬化などの影響を差し引いて考えるか,他の部位の骨密度も参考にして判断する必要があります。
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