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(8)強迫性障害【第2章 用語解説】[特集:向精神薬 総まとめ]

No.4709 (2014年07月26日発行) P.83

澤村実紀 (東京女子医科大学精神医学教室助教)

登録日: 2016-09-01

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▶疾患概念

強迫性障害(obsessive-compulsive disorder:OCD)は,従来の強迫神経症がほぼ相当し,反復する強迫観念または強迫行為を特徴とする1)。自分にとって無意味ないし不合理と判断される思考や衝動,行動が支配的となって制御できない病態である。このうち,強迫観念は反復的で侵入的な思考,感情,念慮,感覚を指し,絶えず心を占め,意識的に除去しようとしても取り除けない。強迫行為は駆り立てるように行われる定形化された反復行動を指し,数唱,確認などを含む。多くは強迫観念に伴う不安を中和する試みとして生じ,その不合理性や過剰性を自覚し止めたいという意思を伴う。ともに多くの時間を要し,毎日の生活習慣や職業上の機能,社会活動,他者との関係などを妨げる。
生涯有病率は2~3%と推定され,性差は成人では認められないが,青年期では男性優位で,平均発症年齢は男性が19歳前後,女性が22歳前後である。うつ病との合併が少なくとも20~30%に並存し,生涯有病率は60~70%である。

▶治療

神経生物学的にはセロトニン神経伝達異常などが指摘され,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)や三環系抗うつ薬の有効性が報告されている。一時的にベンゾジアゼピン(BZ)系抗不安薬が併用されるが,同薬剤に抗強迫作用はない。不安や不合理感が目立たない一群,薬剤効果が得られにくい一群,生物学的準備性など,臨床像には個人ごとに差があり,疾患概念は一律ではない。近年,OCDスペクトラム障害としても理解される2)3)。予後は20~30%が著明に改善,40~50%が中等度の改善,残る20~30%は持続・悪化の転帰となる。
行動療法としては,原則はこれまで回避してきたことに直面化させ(曝露法),不安を軽減するための強迫行為をあえてしないようにする練習(反応妨害法)が併用される。また,認知的歪みが著しい場合や強迫観念のみの場合は認知療法が有効であり,強迫症状の不合理性に対する洞察を促す。そのほか,森田療法,電気痙攣療法,深部脳刺激なども行われる。


●文献
1) 山内俊雄, 他編:専門医をめざす人の精神医学. 第3版. 医学書院, 2011, p475-81.
2) 渡辺範雄:総病精医. 2013;25(2):178-87.
3) American Psychiatric Association:Desk reference to the diagnostic criteria from DSM-5. 2013.

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