日本学術会議は3月24日、軍事目的の科学研究を行わないとの過去の声明を継承する、新たな声明を決定した(13頁)。軍事研究に関する声明を発出するのは、実に半世紀ぶりとなる。4月13日には声明の考え方を詳しくまとめた「報告」も公表した。
議論のきっかけとなったのは、防衛装備庁が2015年度から大学などを対象に開始した「安全保障技術研究推進制度」(用語解説)だ。近年、国の科学技術予算は3兆5000億円前後で横ばいとなっているが、自衛隊が使用する武器や機械などの装備品に適用可能な基礎研究に研究費を支給する推進制度は、今年度予算が前年度から約18倍増の110億円(図1)。同制度に対する大学の対応が分かれている。
学術会議は昨年6月に「安全保障と学術に関する検討委員会」(委員長=杉田敦法政大法学部教授)を設置。医学界からは森正樹阪大教授、向井千秋東京理科大特任副学長が参加した。今年2月の公開フォーラムでは、日本医療研究開発機構(AMED)で研究の評価・運営に関わる医師の福島雅典氏(先端医療振興財団臨床研究情報センター長)が講演し、科学者が軍事関連研究に一切関わらないことを学術会議が主導するよう求めた。
声明は推進制度について「政府による研究への介入が著しく、問題が多い」と懸念を表明。研究成果は科学者の意図を離れて攻撃的な目的にも使用されうるとして「研究の入り口で研究資金の出所等に関する慎重な判断が求められる」と指摘し、大学等の研究機関に対し軍事的安全保障研究と見なされる可能性がある研究について、「その適切性を目的、方法、応用の妥当性の観点から技術的・倫理的に審査する制度を設けるべき」と要請した。
残り1,228文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する