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NSAIDs持続投与による腎血流低下,心不全増悪の機序は?【PGs産生を抑制するCOX-1,2阻害作用による】

No.4855 (2017年05月13日発行) P.57

池田安宏 (山口県立総合医療センター循環器内科 診療部長)

登録日: 2017-05-09

最終更新日: 2017-05-09

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  • No.4789「他科への手紙」(山口県立総合医療センター・池田安宏先生)を拝読しました。NSAIDs持続的投与による腎血流低下,心不全増悪のメカニズムをご教示下さい。

    (埼玉県 I)


    【回答】

    NSAIDsの製品添付文書には「プロスタグランジン合成阻害作用により,水,ナトリウムの貯留が起こるため,心機能不全が悪化するおそれがある」と記載されており,心不全患者での使用は禁忌とされています。しかし,NSAIDsによる腎血流低下作用については,添付文書には明記されていません。ご指摘を受け,改めてこれまでの報告を整理してみました。

    (1)NSAIDsの薬理学的作用

    NSAIDsの薬理学的作用は,prostaglandin H synthaseの2つのisoform〔cyclooxygenase(COX)1 and 2〕,すなわちCOX-1およびCOX-2阻害作用により,体内で痛みの原因となるプロスタグランジン(PGs)の産生を抑制することにあります1)。痛みの産生に関わるCOXはisoform 2であるため,原理的にはCOX-2のみを阻害すればよいのですが,従来のNSAIDsはCOX-1,2ともに非選択的に阻害してしまいます。COX-1は体内では胃粘膜の防御機構維持や血小板凝集,腎機能の維持にも関わっており,非選択的COX阻害薬であるNSAIDsは副次的作用として,胃粘膜障害や血小板凝集抑制,腎機能障害を起こします。すなわち,腎臓においては,COX-1阻害は内因性プロスタグランジンI2およびE2による輸入細動脈(ネフロンに入る動脈)拡張作用を阻害し,腎血流量(renal blood flow:RBF)および糸球体濾過率(glomerular filtration rate:GFR)の低下が起こります。

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