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【この人に聞きたい】精神鑑定の現状と課題は?

No.4855 (2017年05月13日発行) P.8

岡田幸之 (東京医歯大院教授)

登録日: 2017-05-12

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  • 鑑定医が行うのは
    「病気や病気以外が事件に与えた影響の機序」の説明。
    人材確保、質の担保のためには教育基盤の構築が必要。


    〔略歴〕1991年筑波大卒。国立精神・神経医療研究センター司法精神医学研究部長などを経て、2015年より東京医歯大院教授(犯罪精神医学)。数多くの精神鑑定を手掛けてきた。精神保健指定医、医学博士、臨床心理士。

    精神鑑定の現状と課題は?

    大きな事件が起こる度に注目される刑事責任能力鑑定。そこで活躍するのが、鑑定医だ。具体的な役割や現状、課題は何なのか。国内有数のエキスパートである岡田幸之東京医歯大院教授に聞いた。

    ─刑事責任能力鑑定の種類は。

    起訴前の簡易鑑定と本鑑定、公判段階の公判鑑定の3種類です(図1)。
    起訴前の簡易鑑定と本鑑定は、検察官が事件を起訴するかを決めるときに行います。公判鑑定は、弁護人や裁判官が起訴前の鑑定結果では不十分だと感じた場合や、鑑定せずに起訴されたケースに対して行います。

    ─3種類の鑑定それぞれのメリット、デメリットとは。

    簡易鑑定は半日程で行うので通常、医学検査や心理検査、家族面接を省略します(9頁図2)。面接も1~2時間と短いため、情報量の少なさが最大のデメリットです。メリットは、逮捕から間もない時期に鑑定するため、事件に近い状態の被鑑定人を診られることです。医療への早期介入の貴重な機会にもなっています。
    一方、本鑑定や公判鑑定で行う面接は2〜3時間×10回以上のことも。2~3カ月かけてたくさんの情報を集めるため、より丁寧な鑑定になります。デメリットは、事件からだいぶ時間が経ってしまうことが挙げられます。

    「病気や病気以外の影響の機序」を説明

    ─患者に寄り添う精神科医としての立場から鑑定結果が偏ってしまうことはないのか。

    偏らないことが大原則です。依頼者が検察官、弁護人どちらであっても、その意向におもねるようではいけません。どちらの立場からの疑問にも、真摯な医学的態度で答えることが大切です。
    もちろん精神科医として、患者のためにという気持ちはありますが、それは被鑑定人を責任能力鑑定上で有利にすることではありません。診療の際に患者の言いなりになっても患者のためにはならないと考える臨床医のスタンスと全く同じです。
    公正さを保つことは精神鑑定の基本。たった1つの偏った鑑定が、精神医学全般への不信を招くのです。

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