従来,新鮮神経損傷に対しては神経縫合術が行われてきたが,新鮮損傷でも神経の欠損を伴っていたり,陳旧性損傷で神経切断端が退縮している場合には自家神経移植術が行われることが一般的であった。移植神経としては腓腹神経や内側前腕皮神経などの知覚神経が選択されるが,神経採取部の知覚鈍麻やしびれ,疼痛などの合併症が危惧されてきた。
近年,自家神経移植術の代替療法として,神経再生誘導チューブによる神経欠損再建が注目されている。米国ではかなり以前に臨床使用が認可されていたため,一般的に使用されるようになっていたが,わが国においても2013年に臨床使用が認可され,多くの施設で使用されるようになってきている。
現在,わが国で臨床使用できる神経再生誘導チューブはポリグリコール酸という材質でできたチューブにコラーゲンが充塡されたものであるが,種々の神経損傷に対応できるよう複数の径のチューブがそろえられている。問題点としては,長距離の欠損では十分な神経機能の回復が得られないことが挙げられ,適応は40mm以下の欠損とされている。また,知覚神経の再建に対しては有用とする報告が多いが,運動神経の再建においては不十分とする報告も散見され,今後も検討を重ねていく必要がある。
神経再生誘導チューブに関しては,現在も国内外の施設で研究が進められており,今後さらに有用性の高い神経再生誘導チューブの登場が期待される。
【解説】
加地良雄 香川大学リハビリテーション科講師