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橋本脳症の診断について【橋本脳症の病像は多様であり,軽症例を見逃さないことが大切】

No.4861 (2017年06月24日発行) P.49

牧 美充 (鹿児島大学神経内科)

登録日: 2017-06-21

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橋本脳症は,大脳由来の高次脳機能障害から小脳症状まで様々な症状を呈しうる。抗甲状腺抗体(抗TPO抗体,抗TG抗体)の存在,ステロイドへの良好な反応性などで診断するが,症状の多様性のために心因性疾患や神経変性疾患と間違われることもしばしばある。初期に診断できると治療反応の良好な場合が多く,一般臨床の現場で本症を鑑別に挙げることが大切である。

筆者らの自験例では,発症の誘因になりうるイベントを認める例が多くみられた1)。脳症は,脳を攻撃する免疫担当細胞や抗体が血液脳関門(BBB)を越えることで発症するため,BBBが破綻するイベント(外傷,感染,事故,出産など)後に中枢神経症状が出現している場合,橋本脳症のような自己免疫性脳症を考慮する。

また,徒手筋力テストで持続的に力を込め続けられないgive-way weaknessや非典型的な感覚障害,非典型的な不随意運動もみられた。これらは心因性疾患の所見ともされているものであるが,自験例からは,このような神経所見がみられた場合も橋本脳症を鑑別に挙げる必要がある。そして,甲状腺疾患の既往がある非典型的な中枢神経障害では,橋本脳症を鑑別に挙げなくてはならない。

橋本脳症の多くは軽症例であり,見逃されている症例も多い。治療可能な認知症疾患のひとつでもあり,積極的に検査,診断することで,患者のADL向上に寄与することができる。

【文献】

1) Maki Y, et al:Brain Nerve. 2016;68(9):1025-33.

【解説】

牧 美充 鹿児島大学神経内科

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