2012年11月に,淀川キリスト教病院が12床からなるアジア最初のこどもホスピス病棟を開設した。こどもホスピスは成人ホスピスと違い,悪性疾患は全体の5%程度と少数で,全体の95%が小児難病と患者の大多数が重症の身体障がいを患っている。4年間で約300人の重症児が登録しており,年間延べ700人以上が利用している。気管切開が40%,人工呼吸管理の必要な患者が30%を占める。数年前の大阪府の調査では,在宅で人工呼吸管理を必要とする小児の数は80~100人であったが,計算上はそのほとんどがこどもホスピスに登録されていることになる。
高度な医療的ケアが必要な小児の在宅介護は,24時間一時も休まず行う必要がある。大抵は母親が1人でその役割を担っており,負担がきわめて大きいため,休息が必要である。こどもホスピスは,患者を数日間安全に,楽しい環境で預かることをめざしている。地域社会や行政からの要望も多く,こういった取り組みは,今後さらに全国的規模へと広がっていくことが期待されている。
こどもホスピスのもう1つの重要な役割として,治療法が見つからない悪性疾患を患う子どものend-of-lifeケアがある。既に4年間で14人の患者を天国に見送った。こどもを先に見送らないといけない両親の悲哀は,言葉では言い表すことはできない。しかし,どんなに短い人生であったとしても,その人生が無駄ではなかった,意義のある人生として完成させることができるような,全人的なケアを提供している。
【解説】
鍋谷まこと 淀川キリスト教病院小児科部長/副院長