(長野県 K)
著作権法上の規律からの観点と,広く研究倫理の観点の両面から考えてみましょう。
(1)著作権法との関係
事実やデータそのものや慣用的な手法で表現した図表等は,著作権法上の著作物に該当しない場合もありますが,ここでは図表等も著作物に該当することを前提に考えてみます。
著作権法で定められた「権利の制限」の利用類型に該当する場合には,他人の著作物をその著作者の許諾を得ることなく利用することができ,権利侵害とはなりません。
行政機関が著作物を利用する場合,行政上の必要から,①行政目的のため内部資料として複製すること(外部公表資料に利用する場合は含まれない),②特許等や薬事に関する審査手続等において複製すること,について,権利の制限が設けられています(著作権法第42条)。この場合,「出所の明示」(出典の明示)を行うことが必要です(同法第48条第1項第1号)。
また,行政機関に限定されず,広く万人が活用できる権利の制限に「引用」があります(同法第32条第1項)。引用にあたっては,一般的には,引用する著作物と引用される他人の著作物が明確に区別できる形態で引用していること(明瞭区別性),引用する側が「主」であり,引用される側が「従」であるとする関係(主従関係)が認められることが必要であると解されています。これは,公的な文書等において引用する場合と,それ以外の文書に引用する場合との区別はありません。出版物等において他人の著作物を複製して引用する場合(例:論文への引用)には,「出所の明示」が著作権法上義務づけられています(同法第48条第1項第1号)。これは,引用者が行政機関やその所属職員の場合でも同様であり,引用にあたり適切な出所の明示を行わないときは,著作権法違反の恐れがあります。
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