安倍晋三内閣は6月9日、「経済財政運営と改革の基本方針2017」(以下、「骨太方針2017」)、「未来投資戦略2017」等を閣議決定しました。翌日の全国紙は、安倍内閣支持が鮮明な読売を除いては、「乏しい新味」(朝日)、「小粒な成長戦略」(毎日)、「社会保障・財政『落第』」(日経)と、軒並みきわめて厳しい評価をしました。自民党幹部からも、「骨太が『骨太』でなくなってきた。小骨になってきたなぁ」との皮肉が出されているそうです(『週刊社会保障』6月12日号、58頁)。
私自身も、これら文書の全体と医療・介護・社会保障改革方針を読んで同じ感想を持ちました。ただし、本稿では、敢えて、「骨太方針2017」と「未来投資戦略2017」の新しさを探します。ただし、紙数の制約のため、介護制度改革には触れられません。
私は「骨太方針2017」全体での最大の「新しさ」は、「骨太方針2016」には明記されていた消費税を2019年10月から引き上げる方針が消失していることだと思います。同日の臨時閣議後の会見で菅義偉官房長官は、予定通り実施する方針に変わりはないと話したものの、これにより、消費税引き上げが三度延期され、それを主財源とする「社会保障の機能強化」がさらに遠のく危険は強まったと思います。
個別の改革方針の最大の新しさは、「幼児教育・保育の早期無償化」であり、そのために「財政の効率化、税、新たな社会保険方式の活用を含め、安定的な財源確保の進め方を検討し、年内に結論を得」るとされています(9頁)。「新たな社会保険方式」とは小泉進次郎議員等が提唱した「こども保険」を意味します。私はそれの導入が、消費税率引き上げ延期の口実とされる可能性もあると思います。
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