【質問者】
高山義浩 沖縄県立中部病院感染症内科・地域ケア科医長
薬剤耐性菌は長らく,濃厚な医療を行っている医療機関で発生する問題ととらえられてきました。入院患者に抗菌薬を投与する機会が多いため耐性菌が選択されやすく,しかも易感染性患者が多く院内感染対策の不備が集団発生につながりやすいからです。そのため,薬剤耐性菌対策は病院を中心に行われ,これまで一定の成果を挙げてきました。手指衛生をはじめとする院内感染対策は病院内での水平伝播を防ぐ上で最も重要です。
一方,たとえばβラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性(β-lactamase-negative, ampicillin-resistant:BLNAR)インフルエンザ菌やキノロン耐性大腸菌など,市中で拡大する耐性菌が増加しています。
外来での抗菌薬使用と耐性菌の増加との相関が知られており1),わが国の医療領域で用いられている抗菌薬使用量の80%以上を占める外来抗菌薬が注目されています2)3)。わが国の外来診療では,本来抗菌薬が不要とされる気道感染症群の60%で抗菌薬が処方されているとの報告もあります4)。これまでわが国ではあまり注目されていなかった外来診療においても,抗菌薬治療が必要ならきちんと使い,必要なければ処方しないという抗菌薬適正使用の推進が薬剤耐性菌制御の一環として重要となります。
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