近年,自然免疫異常の病態解析が注目されている。クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)は自然免疫に関わるパターン認識受容体(PRRs)のひとつであるNLRP3の遺伝子変異により,多臓器に無菌性炎症を生じる自己炎症性疾患である。NLRP3は自己を侵す「外因性」の病原体関連分子パターン(PAMPs)だけでなく,自己内で生じる「内因性」のダメージ(傷害)関連分子パターン(DAMPs)を認識し,インフラマソームと呼ばれる蛋白複合体を形成することで,炎症応答をカスケード式に拡大させる。
このインフラマソームを介した自然免疫応答が,中枢神経系疾患にも関与することが明らかとなってきた。細胞死時に生じる自己由来のATP,尿酸,DNAや,アミロイドβ蛋白などの代謝産物がDAMPsとなり,中枢神経系内に常在するミクログリアなどに発現するPRRsに認識されることで,慢性的な自然免疫活性化が生じる。これまでに脳虚血-再灌流障害,アルツハイマー型認知症,多発性硬化症,慢性外傷性脳症,精神疾患などとの関連性が報告されている1)。
血液脳関門を越える必要があるPAMPsだけでなく,中枢神経系内で生じたDAMPsによって免疫応答が開始されるという仕組みは,神経免疫疾患だけでなく,神経変性疾患,精神疾患などの病態進展に関与している可能性があり,今後の治療標的となることが期待されている。
【文献】
1) Heneka MT, et al:Nat Rev Immunol. 2014;14 (7):463-77.
【解説】
中村友紀 鹿児島大学神経内科