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アイルランドの死因究明・死亡証明・死亡統計【OPINION】

No.4865 (2017年07月22日発行) P.18

石原憲治 (千葉大大学院医学研究院法医学教室特任研究員、京都府立医大法医学教室特任教授)

反町吉秀 (自殺総合対策推進センター 地域連携推進室長)

登録日: 2017-07-21

最終更新日: 2017-07-19

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  • 筆者らは、2016年11月初旬、アイルランド共和国(以下、アイルランドと略)を訪れ、先進的と言われるアイルランドの自殺対策への取組みと、その前提となる死因究明制度に関し多くの研究者、実務者の話を聞き、意見交換をした。本稿は、死因究明制度、死亡証明、死亡統計に焦点を当てた。主目的の自殺対策については稿を改めて考察したい。

    1.死亡の届出制度

    アイルランドを含む英語圏の多くはコロナー制度1)という独特な死因究明制度を採用している。コロナーは、死因・死因の種類を決定する独立した公職であり、検死審問(inquest)を主宰する点から見れば、一種の司法官である。まず、自然死でないことが疑われる死体があると、警察又は医師らはコロナーに届ける義務が課せられている

    アイルランドのコロナーは、法曹か医師の資格が必要であり、私たちが面談したコーク市及びコーク郡のコロナー、コミン氏は事務弁護士(solicitor)だった。コーク郡市には3人のコロナーが担当の地域を持っており、彼の管轄では約20万人の人口に対し、年間約900件の届出がある。わが国の警察届出と比べると人口比で3倍以上の届出数となっている。届出の基準は法定され、暴力による死や突然死はもちろんのこと、刑事施設などに拘禁中の死もコロナーに届け出られる。届出を受けたコロナーは、初動調査によって診断名が明らかな自然死であると認めた場合、その死体の扱いを担当の臨床医に戻し、その医師が死亡証明書を発行する。その他の死体はコロナー管轄の死体として死因究明が行われる。

    残り2,210文字あります

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