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「心理・社会的な問題も慢性痛の大きな要因」【この人に聞きたい】慢性痛診療の現状と課題(牛田享宏・愛知医大学際的痛みセンター長)

No.4867 (2017年08月05日発行) P.12

登録日: 2017-08-07

最終更新日: 2017-08-03

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  • 心理・社会的な問題も慢性痛の大きな要因。
    医療者、患者、周囲へのさらなる啓発や、
    不採算性の解消が課題

    〔略歴〕1991年高知医大卒、95年同大院博士課程修了。2010年愛知医大学際的痛みセンター長、13年同大運動療育センター長(兼任)。日本運動器疼痛学会理事長

    QOL低下や就労困難を招くなど社会的損失が大きいとされる慢性痛。保有者は国内で2000万人(推定)とも言われている。診療の現状や課題はどうなっているのか。日本初の集学的痛み治療・研究施設として創設された愛知医大学際的痛みセンターの牛田享宏教授に話を伺った。

    ─慢性痛診療の現状を教えてください。

    神経障害性疼痛患者約5000人を対象とした日本整形外科学会の調査では、9割以上の患者さんが整形外科に通っていることが分かっています。神経障害性疼痛の場合、治療効果は喜ばしいものではありません。薬を処方しても、著効するのは3人に1人くらい。重症度が違うとは思いますが、病院での治療より接骨院の方が満足度が高いということも言われています。それで医療費がかさんでいるにもかかわらず、半数の患者がドクターショッピングをしているのが現状です(図)。



    ─なぜ治療が難しいのでしょうか。

    慢性痛患者は、不安やうつのスコアが高いことが多いです。驚くことに、慢性痛患者の約9割に、精神科の病名もつくことが分かっています。器質的な問題だけでなく、心理・社会的な問題も要因となることが明らかになってきている一方で、社会の理解は進んでいません。

    慢性痛を理由に体を動かさなくなり、廃用症候群や生活障害を引き起こす問題も指摘されています。私も構成員を務めた厚生労働省の「慢性の痛みに関する検討会」が2010年に公表した提言書では、慢性痛発症後の医療システムや予防のための国民教育システムの整備が必要だと指摘しています。

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