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果実によるジャガイモの栽培

No.4691 (2014年03月22日発行) P.66

中山 輝 (北海道立総合研究機構北見農業試験場研究部)

登録日: 2014-03-22

最終更新日: 2017-08-03

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【Q】

家庭菜園でジャガイモにときどきトマトに似た実をつけることがあるが,翌年に植えるとジャガイモの収穫はできるのか。(埼玉県 I)

【A】

果実に含まれる種子を播種し,栽培することでジャガイモを収穫することは可能である

果実の正体とその中身

ジャガイモは花が散った後,ミニトマトに似た果実(漿果,ベリーとも言う)をつける場合がある。直径2cm程度の緑色の球形をしており,熟すと黄色や暗褐色を帯び,芳香を放つ。成熟に伴い甘味は増すが,もともとアルカロイド含量が多いことから,基本的に食用には向かない。果実の中には100〜300粒程度の種子(これを真正種子,true potato seedと言う)が含まれる。種子は長さ2mm程度で,1粒はわずか0.5〜1.0mg程度である。
果実を結実する程度は栽培環境や品種により異なり,「男爵薯」や「メークイン」などではほとんど実らず,「キタアカリ」や「とうや」では実りやすい。

種子播き栽培の方法

果実の中の種子を植えた場合でも,地下部には塊茎が形成され,イモとして収穫することが可能である。まず,種子を取り出す方法は,①ボウルに果実を入れ,水を加える,②水中で果実を手で潰し,よく揉んで種子を出す,③破けた皮と果肉を外に出し,底に沈んだ種子を流さないように水を捨てる,④新聞紙などの上に種子をあけ,2,3日間乾燥させた後,紙封筒などに入れて貯蔵する。
次に,播種方法については,育苗してから畑に定植することが望ましく,草丈が5〜10cm程度に伸びた後,株間を20cm程度にして定植する。定植して100日ほど経過したら収穫することが可能である。

ジャガイモの特性

ジャガイモは栄養繁殖性作物であり,通常は,栄養器官である塊茎で繁殖する。塊茎から増殖した個体は親とまったく同じ遺伝子型を持つクローンであり,様々な形質は親とまったく同じになる。しかし,果実にできた種子は,人間と同じように様々な遺伝子型となっており,1個体ずつ親品種とはまったく異なる塊茎の形や色,大きさになる。

品種改良について

北見農業試験場では,ジャガイモの品種開発を行っており,収量性や病害虫抵抗性などを考慮し,交配を行っている。父親品種の花粉を母親品種に受粉させることで果実を形成させ,種子を得る。その得られた種子の中から有望なものが選抜され,新たな品種が誕生する。すなわち,果実は品種開発においてなくてはならないものである。

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