No.4690 (2014年03月15日発行) P.19
石橋昌幸 (国立がん研究センター東病院呼吸器内科)
大松広伸 (国立がん研究センター東病院呼吸器内科副科長)
大江裕一郎 (国立がん研究センター東病院呼吸器内科科長,副院長)
登録日: 2014-03-15
最終更新日: 2017-08-07
a :左中肺野に腫瘤を認める。腫瘤の辺縁所見では下端は明瞭であるのに対して,上端は不鮮明である(黄色矢印)。
b :RL像では,胸壁に腫瘤と結節を1つずつ指摘できる(赤枠,黄色枠)。
c :RL像でみると,腫瘤の下縁は正面像撮影の際にX線方向と接線を作り輪郭が明瞭となるのに対し,上縁は腫瘤と接線を作らない。この結果,腫瘤の上縁はコントラスト差が少なく,PA像では輪郭が不明瞭となる。
d :左CP–angleが鈍化し,胸水貯留が疑われる。また,左下肺野の胸膜は表面が粗糙であり,胸膜肥厚が疑われる。
X線の透過方向と接線を形成する面が多い物体ほど輪郭が明瞭になる。
a :左肺上葉側の胸膜に腫瘤を認める(矢印,赤丸枠)。
b :HE染色。大小不同の核と抗酸性胞体を有する腫瘍細胞が管乳頭状に増殖している。
c :カルレチニン染色は陽性。
d :D2–40染色は陽性。
悪性中皮腫で陽性となることが多いカルレチニン染色とD2–40染色が共に陽性であり,胸膜腫瘍は悪性中皮腫と診断された。
悪性胸膜中皮腫は,人口10万人あたり30人程度の罹患率の腫瘍であり,多くの症例がアスベストの曝露から30〜40年程度を経て発症している。治療抵抗性が高く,予後不良な疾患である。
胸膜から発生する腫瘍であり,その画像所見では一見,肺内腫瘤様であっても胸膜外徴候(extra-pleural sign)を有することが多い。
胸膜外徴候は,胸壁や縦隔に接した腫瘤の存在部位が肺内か肺外(胸膜,胸壁,縦隔など)かを判断する際に参考とする徴候である。
肺野発生の腫瘤が胸壁と接する場合には,接触部位の辺縁が鋭(sulcus formation)であることが多いのに対して,胸膜発生の腫瘤では臓側胸膜が持ち上げられ,胸壁との接触部位辺縁が鈍(tapering edge)になることが多い(図5)。
ypT1bN0M0 ⅠB期悪性胸膜中皮腫