(東京都 I)
季節性インフルエンザの症状の程度はウイルスに対する宿主反応に依存しますので,無症候のものから重症化例までその程度の差が大きいと言えます。特に2016/17年のA型インフルエンザでは発熱の程度が軽い症例を経験し,臨床症状からのインフルエンザ診断に難渋している方も少なくないことでしょう。そのような場合はインフルエンザ迅速診断キットが診断の助けとなりますが,検査キットの感度特異度はいずれも高いことが知られているものの,100%ではないので,インフルエンザの診断は迅速検査の結果がどうであれ,医師の判断によることになります。
さて,ノイラミニダーゼ阻害薬等の抗インフルエンザ薬はインフルエンザと診断された人に対しどのような効果が期待できるのでしょうか。抗インフルエンザ薬の有効性の評価は,対照群(プラセボ)との罹病期間や解熱時間の統計的な比較で行います。罹病期間とは,咳,咽頭痛,鼻汁,頭痛,倦怠感,筋肉痛,発汗の7つの典型的なインフルエンザ症状をスコア化し,罹病者自身の評価によって経過を評価するものですが,対照群が93.3時間に対してオセルタミビル群は70.0時間と有意に罹病期間を短縮すると報告されています1)。また,重症化に関しては,対照群の症状スコアAUCが963であるのに対して,保険適用されているオセルタミビル 1回75mg 1日2回 5日間投与群は597で,二次性肺炎を合併した例でもオセルタミビルが有意に有効であることが報告されています2)。このことから,インフルエンザに対する抗インフルエンザ療法は早期に症状を緩和させるとともに重症化の予防も期待できます。
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