No.4871 (2017年09月02日発行) P.20
二木 立 (日本福祉大学特別任用教授)
登録日: 2017-09-04
最終更新日: 2017-08-30
厚生労働省の地域における住民主体の課題解決力強化・相談支援体制の在り方に関する検討会(略称「地域力強化検討会」。座長:原田正樹日本福祉大学教授)は8月21日、「最終とりまとめ─地域共生社会の実現にむけた新しいステージへ」(以下、最終とりまとめ)を決定しました。
本検討会は、2016年6月の閣議決定「ニッポン一億総活躍プラン」で提起された「地域共生社会の実現」について具体的に検討するために、同年10月に発足し、同年12月に「中間とりまとめ」を発表しました。それの検討は、本誌連載(4841号)で行いました。本稿では、「中間とりまとめ」からの変化を中心に検討します。
「地域共生社会」は「地域包括ケアシステムのいわば上位概念」(塩崎恭久前厚生労働大臣。2017年4月5日衆議院厚生労働委員会)であることを考えると、地域包括ケアに関わる医療・福祉関係者も「最終とりまとめ」の本文は読む必要があると思います。
「最終とりまとめ」の本文は30頁で、それに3つの参考資料と「各委員意見の整理」(実名)を併せると合計59頁です。本文は、総論、各論、終わりにの3部構成で、各論は以下の3本柱です。1.市町村における包括的な支援体制の構築について、2.地域福祉(支援)計画について、3.自治体、国の役割。
「中間とりまとめ」と比べた大きな変化は「終わりに」で、「最も大切なことは、『指針やガイドラインを示したので後は自治体で』というスタンスではなく、厚生労働省自身が、これまで以上に熱をもって、本気で取り組んでいくことである」とストレートに述べ、「三つの視点」(人材、自治体における取組の「評価」、財源)を重視すべきと提起していることです(29頁)。
この提起には、地域共生社会は自治体や地域の各機関や専門職、地域住民等に丸投げしたのでは実現できず、厚生労働省=国も積極的に責務を果たすべきとの検討会構成員の見識と熱意が現れています。
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