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適切な向精神薬の処方で精神科不信解消を[お茶の水だより]

No.4686 (2014年02月15日発行) P.13

登録日: 2014-02-15

最終更新日: 2017-09-15

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▶2014年度診療報酬改定では、抗精神病薬をはじめとする向精神薬の多剤投与について、大きな見直しが図られる。種類数制限のない非定型抗精神病薬加算2は廃止。また、1回の処方につき、3種類以上の抗不安薬、3種類以上の睡眠薬、4種類以上の抗うつ薬、4種類以上の抗精神病薬を処方すると、精神科継続外来支援・指導料が不算定となり、処方せん料や処方料なども軒並み減算となる。
▶向精神薬の処方については一部の難治症例を除いて単剤が望ましいとされているが、日本の併用率は他の東アジア諸国や欧米と比べてかなり高い。1人当たりの平均処方数は7〜8種類、1日平均投与量はクロルプロマジン換算で1000ml以上とする報告もある。特に、高い依存性を持つバルビツール酸系やベンゾジアゼピン系の薬剤の処方量・併用率がともに突出しており、これらが服薬自殺に転用されている問題は国会でも取り上げられた。
▶過量服薬による健康被害やADL低下がメディアを通じて知られるにつれて、国民の間には精神科医療への不信感が醸成されていった。それは現在巷間を賑わしている“医療否定本”ブームを喚起した一因でもあろう。
▶しかし、精神科医療は漫然と多剤投与を続けてきたわけではない。吉尾隆東邦大教授の調査によると、2006年に30.5%だった抗精神病薬の単剤処方率は、10年には35.4%に増加。1日当たり1000mlを超える大量投与も緩やかではあるが減少している。これは減薬・休薬の確立した指針がない中で、現場の精神科医が地道に試行錯誤を重ねてきた結果だ。
▶一方、エビデンスに基づいた指針も作られ始めている。昨年10月には、厚生労働科学研究班と日本睡眠学会が合同で『睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン』を発表し、減薬・休薬に取り組む臨床家の前に1つの道筋が示された。精神科医療は多剤投与からの脱却に向けて明らかに前進している。
▶休薬ガイドラインの基となった岩田仲生藤田保健衛生大教授らの研究では、向精神薬を3種類以上併用した場合の不眠改善効果に明確なエビデンスは示されなかった。加算の廃止によって患者に激しい離脱症状を生じさせる安易な休薬が起こるとの懸念もあるが、廃止までには猶予期間が設けられる。今改定を機に向精神薬の適切な使用が進み、精神科医療への国民の不信が拭われることを期待したい。

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