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【マンスリーレクチャー】Dr.徳田のフィジカル診断講座(20)[プライマリケア・マスターコース]

No.4684 (2014年02月01日発行) P.85

徳田安春 (筑波大学附属病院水戸地域医療教育センター教授/水戸協同病院)

登録日: 2014-02-01

最終更新日: 2017-09-27

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筋力の診断

片側性の筋力低下で顔面を含む場合は,反対側の中枢神経病変が原因であることが多い。片側性中枢性病変による反対側筋力低下(片麻痺)の場合,前頭筋と眼輪筋は両側大脳半球支配であるため,これら2つの筋力は保たれる。末梢性病変(顔面神経麻痺)の場合には,前頭筋と眼輪筋を含めた同側の顔面筋の筋力低下を来す。

対称性の筋力低下を訴える患者を診察する時,障害筋肉群が近位筋優位か遠位筋優位かを調べるとよい。近位筋優位筋力低下の場合には筋肉疾患であることが多く,遠位筋優位の筋力低下の場合では神経疾患であることが多い。上肢では,肩関節の外転(三角筋)と手指の外転(指先を広げる)の筋力を比較する。下肢では,椅子から立ち上がる力とつま先立ちの筋力を比較する。患者がベッドから起き上がることが困難な時は体幹の筋力低下を示唆している。

筋力低下を訴えない患者で行うルーチンの筋力検査では,表1に示した5つの部位の筋力を調べればよい。



徒手筋力検査法(manual muscle test;MMT)のスコアにより徒手で筋力を判定する(表2)。



筋肉群を支配する脊髄神経根のレベルを知っておくと,神経根障害のレベル評価に便利である。下肢では図1のような支配レベルとなる。覚え方としては,下肢を前方に移動させるような動きの支配レベルが常に上位に来ていることと,L2からスタートして,股関節,膝関節,足関節の順に,一髄節ずつ下方へレベルが移動していることを記憶しておけばよい。そのほかに重要なレベルとして,足関節内反(inversion)はL4,母趾屈曲筋力はL5,足関節外反(eversion)はS1である。



中枢神経病変による上肢の軽い筋力低下を評価するには,手関節を回外し手掌側を上にして両手をそろえて前方へ突き出させ,しばらくその位置を維持させるようにするとよい(Barre徴候)。軽度でも筋力低下があれば,重力の影響を受けて手関節が回内してくる。開眼時にはこの徴候が陰性で閉眼時に陽性となる場合は,固有感覚(proprioception)の障害を示唆する。

感 覚

一般的な感覚検査では,痛覚,位置覚,振動覚の3つを診る。触覚検査では感覚障害の異常と正常の境界線の区別がやや不正確なので境界線を診ることは避ける。温度感覚は痛覚と同じ神経解剖学的経路を走行するため,一般的には省いてよい。ただ,脊髄視床路の障害が疑われた場合,痛覚に異常がない時には,冷やした(または温めた)音叉を皮膚に当てることにより,温度感覚を調べる。

感覚は自覚的な徴候を診るものであり,長時間の診察による患者の疲労や検者のバイアスによる影響で,正常を異常と見なしてしまう恐れがあることに注意する。中枢性感覚障害による正常と異常の境界線は1本であるが,末梢性感覚障害では境界線は2本である。感覚デルマトームを図2に示す。



痛覚検査に用いる器具はディスポーザブルのものを使用し,あまり鋭利でないものがよい。そうすることで,二次感染や出血のリスクを減らせる。ちなみに,筆者は板性の舌圧子を縦方向に割ったものを用いている。痛覚の比較基準は「顔面」の痛覚を用いる。顔面と両手背,両足背,両肩,両大腿全面の痛覚を比較し,「チクチクする」感覚に差がないかどうかを診る。位置覚を診るには,患者に足趾の関節の受動運動を行ってもらい,その方向を答えさせ,最後にRomberg試験を行う。振動覚は音叉をくるぶしに当てて診るが,正常対照として検者が自身の振動覚を診てから行ってもよい。

協調運動

この項では小脳機能を評価するための協調運動の診かたについて解説する。通常行われる検査は,回内・回外運動,指鼻試験,踵脛試験,そして継ぎ足歩行の評価である。変換運動困難(adiadochokinesis)では,回内・回外運動が素早く,かつ円滑にできない。測定異常(dysmetria)では,指鼻試験でovershootが見られる。四肢失調(limb ataxia)では,指鼻試験や踵脛試験で運動時振戦(kinetic tremor)が見られる。体幹失調(truncal ataxia)は,椅子の上で坐位として足を離した時に上体が不安定となるもので,小脳障害によるバランス異常は継ぎ足歩行をさせると確認しやすい。


◎参考文献

・‌Willis GC:Dr.ウィリス ベッドサイド診断─病歴と身体診察でここまでわかる!. 松村理司, 監訳. 医学書院, 2008.

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