滋賀医大は今年4月、事故・事件・自死などのいわゆる「外因死」によって家族を突然亡くした遺族向けの電話相談窓口を開設した。全国でも類を見ない取り組みを始めるに至った経緯やその狙いについて、同大社会医学講座(法医学部門)教授の一杉正仁氏に聞いた。
異状死と呼ばれる、事件や事故、自殺、突然死などで大切な人を亡くした遺族が受けるショックは計り知れないものです。虚無感に襲われたり、不眠症になったり、やり場のない怒りがこみ上げてきたり、心身にさまざまな症状が長期にわたって表れます。
特に外因死は入院患者が病院で死亡する場合と異なり、警察による検視が行われ、遺族は警察からさまざまな事情を聴かれます。突然家族を失った悲しみに加え、さまざまな手続きや事象により、遺族は混乱することが多いのです。今後の生活や、時には裁判などの流れについてもよく分からず、不安を感じてしまいます。
窓口では、裁判等の法的手続きで分からないことがあるという法律相談の場合は、「おうみ犯罪被害者支援センター」に紹介し、そこで詳細を説明してもらえるようつなぎます。一方、精神的な症状で悩んでいるという相談で、医療の介入が必要だと判断した場合は、滋賀県立精神保健福祉センターの医師や心理士につなぎ、悲嘆反応が悪化しないよう、心理的ケアをお願いします。三者の連携で相談者に必ず行き場を提供し、とにかく孤立させず、精神的健康を維持することを重視しています。
今まで(9月1日現在)10件程度です。専門性の高いアドバイスを求められるので、講座のスタッフが当番制で対応しています。
遺族に対しては、検視官が現場に行った時、解剖になる、ならないにかかわらず窓口の内容を紹介したパンフレットを渡して「気軽に何でもご相談ください」と声を掛けるようにしてもらっています。事件直後は気が動転していても、ゆっくり考えたら関係者の説明で腑に落ちない点などが出てきて、電話を架けてくる、というケースが大半を占めています。
プレミアム会員向けコンテンツです(期間限定で無料会員も閲覧可)
→ログインした状態で続きを読む