ショック状態を早期に見きわめ,介入することが重要である
病態別の解析が進み,生理食塩液(生食)や人工膠質液の大量投与に伴う問題点が指摘されている
大量の輸液は多臓器不全の進行や予後の悪化をもたらす可能性があるため,過剰な輸液にならないよう注意が必要である
一般に重症脱水とは,①10%程度の体重減少を伴い,②ショック状態を呈するもの,を指す。ショックとは組織への酸素供給が不十分な状態を指し,その改善に時間を要した場合,臓器障害をきたすことになる。
ここで重要なのは,ショック状態とは“必ずしも血圧低下を意味しない”ということである。血圧低下は“ショックの最終段階”であり,生体は血圧低下を回避すべく様々な代償作用を発揮する。すなわち,ショックの初期には血圧低下を伴わない“代償性ショック”の状態を呈しており,この段階で介入できるかどうかが治療における重要な分岐点となる(表1)。
一次評価に続き,二次評価ではショックの原因に応じた治療方針を検討する。ショックは,循環血液量減少性ショック,血液分布異常性ショック,心原性ショック,心外閉塞・拘束性ショック,の4つに大別され,重症脱水を伴う病態としては循環血液量減少性ショックと血液分布異常性ショックが特に重要である。小児においては急性胃腸炎による下痢,嘔吐などに伴う循環血液量減少性ショックの占める割合が高く,重症感染症/敗血症に伴う重症脱水も稀ではない。
いずれのタイプのショックにおいても,炎症反応亢進に起因した血管透過性亢進による血管外漏出を伴った場合,輸液組成や輸液量の調整に悩まされることが多い。ショックを呈した重症脱水に対する治療の要点としては,“必要十分な急速輸液を行う”ことに尽きるが,具体的な治療内容に関する定説はいまだになく,議論が続いている。
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