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『診療所経営の教科書』小松大介氏インタビュー 「診療報酬に一喜一憂せず『大きな流れ』をつかんでほしい」

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  • 事務長はクリニックの繁栄を司るキーパーソン

    ――診療所経営をますます戦略的にやらなければいけなくなった時代に、今回、『診療所経営の教科書』の改訂第2版が出たわけですが、本の中で特に強調しているポイントは何ですか?

    小松 改訂で意識したポイントは3つあります。

    1つは、最新のデータで傾向を見ようということ。

    2点目は、地域包括ケアと在宅の流れを意識して「在宅医療」に関する項目を大幅に加筆し、高齢者住宅や介護など周辺事業のあり方についても書き足しました。

    3つ目は、経営と臨床の分離・役割分担を上手にやっているところのほうがクリニックとしての経営が安定化する傾向にあると最近思っているので、事務長の事例などをかなり加えさせていただきました。事務長はクリニックの繁栄を司るキーパーソンになってきています。

    ――既存のクリニックは、経営も含めて1人医師で何から何までやっているところが多いと思いますが、そういうところは時代にどう対応していけばいいのでしょうか。

    小松 私は常に逆張りを考えるのですが、縮小しても大丈夫なように、投資を抑えるというのはやったほうがいいと思います。先生方も年齢を重ねると体力が落ちるので、無理はできない。そうするとスタッフの自然退職はそのままにしておくとか、内視鏡が壊れた、電子カルテが壊れたからといってすぐに新規投資をしないなど、低コストの効率的経営は考えておいたほうがいいと思います。

    一方で、伸ばしていきたいというのであれば、1人医師でとりあえず在宅を少しやってみる。外来の合間にやるにはマックス10人くらいなので、10人までやって、少し感覚がつかめてきて、これは続けられる、伸ばせるということが見えてきたら、普通の居宅で在宅医療を10人やると50~60万円の増収になるので、非常勤の先生を1人入れられるようになります。そのように、収入が上がった分を使うのではなく、次の体制への投資に使うのです。

    しかし、少し軌道に乗ってきて、在宅患者10人が20人になるかも、というところで、だんだん先生自身が自分の体力などいろいろ限界を感じ始めるんですね。ここが境目で、ここよりさらに上に行くなら、もう踏ん張るしかない。自分自身の収入が減ることも一時的には覚悟をして、事務長を雇うコスト、あるいは、常勤医師、副院長を入れるコストをどんと投入する。20人くらいをコンスタントに診られるようになった先生は、それだけ評価があるということなので、ちょっと踏ん張れば50人くらいすぐにいきます。50人までいくと常勤医師1人分が賄えるようになります。50人を目指してちょっといけるぞと思ったら、今度は常勤医師を入れる、プラスアルファで事務長も入れる、というふうにしてもう一段階ステップアップをする。さらにステップアップして常勤医を2人雇えるところまで上がれば、視野が広がるというか、見えているものが一段階上がりますね。

    まず必要なのは、戦略的な判断です。地域の中で自分はどういうポジションにあり、今後どうなっていくかを考えて、縮小均衡がいいのか、拡大がいいのかを決めてほしいし、決めていくときに考える要素として、この本でお見せしているデータを参考にしてもらえるといいなと思っています。

    ――事務長の話でいいますと、事務長を入れる場合は、家族じゃないほうがいいのでしょうか。

    小松 例えば、奥様を事務長にすることが良いのか悪いのかという議論はたぶんあまり意味がなくて、結局人によるんですよね。「家族だから信頼できる」、これは正しいけれど、「家族だから必ずしも仕事ができるわけじゃない」ということです。奥様が非常に人心掌握に向いているとか、病院で看護部長をやっていてすごい手腕があるとか、金銭関係にすごく強いとか、そういうことが見えているのなら頼んだほうが絶対いいです。

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