日本医師会の中川俊男副会長は11月29日、TKC医業経営指標に基づく2016年度の民間医療機関の経営動態分析を発表した。経常利益率は病院と診療所(法人)は低下、個人立診療所はほぼ横ばいだった。
分析の対象期間は2016年4月から17年3月までの間に決算月をむかえた医療機関の直前年度(2016年度)と前々年度(15年度)。対象期間は中央社会保険医療協議会の医療経済実態調査(実調)と同様だが、TKC医業経営指標は民間の医療機関のデータであり、国公立・公的施設は含まれていない。また実調に比べて診療所の客体数が非常に多いのが特徴。
法人の経常利益率は、病院が3.7%(2015年度)から3.6%(16年度)となり低下。過去のTKC医業経営指標では2010年度5.6%、12年度5.2%、14年度3.9%であり、もともと低くなっていたものが、さらに低下した。
診療所は有床が5.2%(2015年度)から4.9%(16年度)、無床も5.5%(15年度)から5.3%(16年度)となり、ともに低下した。
個人立診療所の経常利益率は31.2%(2015年度)から31.7%(16年度)とほぼ横ばいだった。
中川副会長は「法人では、一般病院でも診療所でも給与費率の上昇が利益率を圧迫している。特に一般病院と有床診療所は役員報酬を減らして対応しているが、それでも給与費率が上がり、利益率が低下している。従事者の確保や処遇の改善等に必要な収益が確保できていない状況」と説明。さらに「横ばいやマイナス、微々たる増加では、医療機関は医療の質を担保する経営原資がほとんどなく、危機的だ」と強調した。