甲状腺未分化癌(ATC)に対する多施設共同研究機構であるATC研究コンソーシアム(ATCCJ)で行われた,医師主導前向き臨床試験の結果が報告された1)。
病理組織中央判定により診断を確認したATCを対象に,weekly paclitaxel(1コース:80mg/m2/週×3週)療法(W-PTX)の安全性と効果を検討する非ランダム化・非盲検・単アームの第2相試験(UMIN 000008574)が2012年より行われた。忍容性は56例を対象に検討され,52例(93%)で2コース以上を十分な薬剤強度(relative dose intensity>84%)で完遂できた。有害事象(AE)は98%の症例で出現したが,グレード3以上のものは29%で,AEのために治療中止となった例はなかった。全生存率の中央値は6.7カ月で6カ月生存率は54%であった。標的病変を有した42例において完全寛解(CR)はなかったが,部分寛解(PR)9例,不変(SD)22例で,奏効率21%,臨床的有用率73%であった。治療後に根治切除可能であった8例の生存期間(中央値7.6カ月)は,それ以外の症例(中央値5.4カ月)より有意に長かった(P=0.018)。
ATCに対する世界で最初の前向き臨床試験の結果,W-PTXの安全性と有効性が示された。外来でも施行可能であり,特に術前化学療法としての効果に期待が持たれる。
【文献】
1) Onoda N, et al:Thyroid. 2016;26(9):1293-9.
【解説】
杉谷 巌 日本医科大学内分泌外科大学院教授