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(3)変形性股関節症の臨床評価法 [特集:変形性股関節症治療の実際]

No.4794 (2016年03月12日発行) P.29

兼氏 歩 (金沢医科大学整形外科学教授)

松本忠美 (金沢医科大学病院院長・整形外科学教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-01-26

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  • 変形性股関節症の臨床症状として,動作開始時の痛みや跛行を認めることが多い。また,徐々に日常生活動作が障害されていくことが多い

    日本では変形性股関節症患者の臨床評価を行うツールとして, 専門医以外でも採点できる日本整形外科学会股関節機能判定基準(JOA hip score)が幅広く使用されている

    2012年に日本人の生活動作やQOL評価を含めた患者自記入式の股関節疾患特異的尺度である日本整形外科学会股関節疾患評価質問票(JHEQ)が開発された

    今後,複数の評価基準を使用し,多角的な患者評価を行うことが望ましいと思われる

    1. 変形性股関節症の症状

    変形性股関節症の症状は疼痛と機能障害に大別される。疼痛は動作の開始時,運動時に認めやすく,長時間の立位作業の後にも生じやすい。病期の進行に伴い,動作時のみならず持続する痛みや夜間痛も出現する場合がある。主として,鼡径部に痛みを感じることが多いが,大腿部や膝関節周囲, 殿部痛として自覚する場合もある。患者は跛行や股関節の動かしにくさ(可動域制限),脚長の左右差を自覚したり,他人に指摘されたりする。
    また,足の爪切りが行いにくい,靴下が履きにくい,和式トイレでしゃがみにくい,床や畳から立ち上がりにくい,など病期の進行とともに日常生活動作が制限されていくことが多い。さらに,階段昇降や,車・バスの乗り降りで手すりが必要になる,など疼痛だけでなく筋力低下を自覚する場合もある。

    2. 変形性股関節症の症状評価

    前述したような疼痛,機能障害の状態把握,手術前後での改善度の評価など,統一した基準で比較することは患者間,術式間,施設間などの差異を把握するために重要であり,これまでにも様々な医療評価が行われてきた。股関節可動域,筋力,脚長差など数値で表現することは客観的評価として有用である。一方,痛みや動作は統一された評価基準が必要であり,いくつかの項目を設けた質問票が使用されている。股関節疾患を対象にした,医療従事者も行うことができる評価指標として,Harris hip score1)  やMerle d’Aubigné and Postel hip score2) などが世界的に汎用されてきた。日本においては,日本整形外科学会股関節機能判定基準〔Japanese Orthopaedic Association(JOA)hip score〕3) が存在し,汎用されている。

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