増加する患者クレームにはどう対応すればよいのだろうか。まずはクレームを、職員の接遇など「対応可能」なもの、大きな改修が必要な施設やシステムなど「対応困難」なもの、医療費の値引きなど法律や制度に反する「対応不可能」なものに分類してみよう。その上で、①何に対して怒っているのかを聞き出す、②怒らせた事柄に対して謝罪する、③医療機関のシステム(運用)について理解を求める、④クレームを貴重な意見と考えて、御礼の気持ちを述べる—というプロセスで対応することが基本になる。
ここで重要なのは、毅然かつ丁寧な対応だ。そのためには、他院での対処法の事例や医療機関の主張を裏づける法的根拠を基礎知識として持っている必要がある。もちろんクレームは個別性が強く、マニュアルが通用しない場合もあるが、患者に理解を求める“会話術”次第で、トラブルを回避できるケースも少なくない。
また、例えばトラブルになったとき、患者は「マスコミに言うぞ!」「県や市に言うぞ!」「弁護士に訴えてやる!」などと言って、医療機関を脅かす場合がある。しかし実際にこのような行動を起こすケースはほとんどない。仮に行動を起こされたとしても医療機関に非がなければ、第三者に事情を説明することでかえって理解を得やすい状況になる。
いずれにしても他院の対処法の事例や法的根拠を認識しているか否かで、クレーム対応に大きな差が出ることは間違いないだろう。
次回以降は、医療現場における代表的なクレームの実例を、「窓口・待合室」「支払い」「診察室」「問い合わせ」などの場面ごとに紹介し、その際の患者対応のポイントとして法的根拠に基づいた会話術を中心に解説する。