日本医師会の救急災害医療対策委員会(有賀徹委員長)はこのほど、災害時のかかりつけ医機能を盛り込んだ報告書を取りまとめた。石川広己常任理事が2月28日の会見で明らかにした。
報告書は、横倉義武会長から「地域の救急災害医療におけるかかりつけ医の役割―地域包括ケアシステムにおける災害医療を中心に」「JMAT活動の課題と対策―コーディネーター機能を中心に」という諮問を受け答申したもの。
報告書では、災害対策基本法に基づく地域防災計画で災害時のかかりつけ医の役割が位置づけられていないことや、医師会が災害時のかかりつけ医機能推進策をとっていないことを問題視。日医および地域医師会は、かかりつけ医機能の強化を図りつつ、中央防災会議や地方防災会議などで災害対策におけるかかりつけ医機能を明確化するよう主張していくことを求めた。
さらに、災害医療における地域包括ケアシステムの重要性を強調。平常時と同様にかかりつけ医が多職種を統括しつつ、医師会や行政と連携する必要性を訴えた。災害時のかかりつけ医機能については、平時から災害医療に関する教育を受け、災害発災時に他の救助隊と協力して救護活動できるように準備をしておくことを求めている。
石川氏は、「地域包括ケアシステムの中心にいるかかりつけ医は、地域の実情を理解し、住民や患者から信頼されている。災害時は被災地のかかりつけ医が多職種を統括しながら被災地の医療提供や健康管理を行う必要がある」と強調した。
日本医師会災害医療チーム(JMAT)活動については、各医療チームの活動の指揮命令やコーディネート機能を担う「統括JMAT」の役割を明記した。
報告書では、災害時の課題として、さまざまな医療チームが支援に駆けつける一方で現場が混乱し、効率的な支援活動に結びついていないと指摘。今後のJMATのあり方として、情報の把握や評価を行い、JMAT本部への発信、各医療チームの統括を行う「統括JMAT」を養成する必要性を示した。このうち、発災後1日以内に現地に駆けつけ被災地で求められる機能などを判断する「先遣JMAT」を設けることも重要だとしている。