厚生労働省は12日、薬事・食品衛生審議会の食中毒部会に2017年中の食中毒発生状況を報告した。事件数は1014件(対前年比125件減)、患者数は1万6464人(同3788人減)と前年から減少したものの、宇都宮啓生活衛生・食品安全審議官は「長期的にみれば下げ止まり傾向にある」と指摘。今国会で審議する予定の食品衛生法改正案を通じて、食中毒の広域発生事例などへの対応を強化する考えを強調した。
2017年には、ノロウイルスに汚染されたきざみのりを原因食品とする大規模な集団食中毒が1月に和歌山県で、2月に東京都で発生。また、7~9月には、関東地方の総菜店を中心とする腸管出血性大腸菌O157の広域感染事例が発生し、3歳の女児1人が死亡した。
病因物質別の患者数は、ノロウイルスが8496人(51.6%)と過半を占め、次いで、カンピロバクターが2315人(14.1%)、ウェルシュ菌が1220人(7.4%)―などと続く。アニサキスの患者報告数が前年の2倍近い242人に上ったが、テレビ等が大きく取り上げ、臨床医・患者の意識が高まったことが要因とみられる。
カンピロバクター食中毒については、4月以降の発症患者の約9割で、生または加熱不十分な鶏肉の関与が疑われた。約半数の事例では、仕入れ品に「加熱用」の表示があるのに生または加熱不十分の状態で提供されていた。厚労省は食鳥処理業者や飲食店に加熱調理が必要である旨の情報伝達の徹底を指導しているが、今後は悪質な業者に対し告発を含めた措置を取る方針。