日本小児科学会はこのほど、ビーズ型芳香消臭脱臭剤を誤嚥し、気管支閉塞に陥った乳児の事例を学会ホームページ上で公表し、脱臭剤をチャイルドレジスタンス容器に収納するなど、類似事例の予防を呼び掛けた。小児医療関係者が、年齢ごとの手の届く位置を踏まえ、保護者に対し、具体的な注意・教育を行うことも重要としている。
同学会は、2月20日に公表した「Injury Alert」(傷害速報)で、2017年2月に発生した10カ月男児の誤嚥事例を紹介。誤嚥した消臭剤は詰め替えタイプで、ビーズ型の脱臭剤が容器に入っており、乾燥する際に消臭効果を発揮する。乾燥していない状態のサイズは直径10mm。男児の手の届く範囲に容器が置かれており、その中に乾燥して縮んだ脱臭剤が入っていた。
■誤嚥翌日に受診、外来で気管挿管
乾燥して小さくなった脱臭剤を男児が口に含んでいたのを発見した母親は、2粒を掻き出したが、翌日に機嫌が悪いのが気になって外来を受診。経過中、突然咳き込むような様子はなかったという。
診察した医師は、男児に顔色不良、酸素化不良(SpO2:58%)を認め、外来で気管挿管を実施。胸部X線写真で左肺の含気低下がみられたため、透視下に軟性気管支鏡で確認すると、脱臭剤と思われるゼリー状の物質によって左主気管支が閉塞されていた。可能な限り吸引で除去し、閉塞が解除されると左肺の含気は改善。翌日に抜管し、その後は一時的な発熱はあったものの、呼吸状態は保たれていたため経過観察とし、その後解熱した。男児は入院4日目に退院した。
■声門通過後に水分再吸収で気管支を閉塞
同学会の「こどもの生活環境改善委員会」は、生後10カ月程度の小児の声門のサイズは2×6mm程度と推測されることから、今回の事例では、乾燥して2~3mmに縮んだビーズが声門を通過した後、水分を再吸収して膨らんだため、気管支を閉塞したと分析している。