(大阪府 K)
まず,自転車の通行区分について確認しましょう。
道路交通法上,自転車は「軽車両」として,車両に分類されます(法2条11号,同8号)。したがって,自転車は,歩道又は路側帯(「歩道等」)と車道の区別のある道路においては,車道の左側端,又は路側帯を通行することになります(法17条1項,17条の2第1項)。
しかし,例外的に,①道路標識等により自転車が歩道を通行できることとされているとき,②自転車の運転者が,児童,幼児その他の自転車により車道を通行することが危険であると認められるものとして政令で定める者であるとき,③車道又は交通の状況に照らして自転車の通行の安全を確保するため自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められるときには,自転車が歩道を通行できると定められています(法63条の4第1項)。
したがって,上記例外①~③に該当しないにもかかわらず自転車が歩道を走行していた場合には,通行区分違反を問われる可能性があります。
ただ,実際に時速60kmで自動車が走行する車道の左側端を時速約15kmの自転車が走行するのは危険な状況も散見されますので,自転車が歩道を走行することについて通行区分違反と取り締まることはかなり少ないのではないでしょうか。その意味では,道路交通法の通行区分は現在の交通事情にそぐわない部分があるのかもしれません。
交通事故の過失割合については,東京地裁の交通部の裁判官らが公表した基準「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(全訂5版)1)が多く参考にされています。
これによると,ご質問にある,信号機による交通整理が行われていない交差点で左折自動車と直進自転車が衝突した場合(いわゆる巻き込み事故)の過失割合は,原則として(直進自転車:左折自動車)=(10:90)とされています。基本的に直進車が優先であること,左折自動車の後方確認不十分の過失が大きいこと,および,自転車一般に共通の事情(免許不要で誰でも運転でき,速度も遅いこと等)から,左折自動車の責任が重くなっているものと考えられます。そして,直進自転車が車道ではなく歩道を走行していた場合も,それが上記のように通行区分違反とされない限りは同様の過失割合になると考えられます。
もっとも,自転車が,時速30km程度(原動機付自転車の制限速度程度)の高速度で走行していた場合や,酒気帯び,2人乗り,無灯火,並進,傘をさす等の片手運転,脇見運転等の著しい前方不注視の場合,携帯電話等を利用しながら運転していた場合などは,著しい過失があるとして,直進自転車の過失が大きくなる可能性があります。
自転車は免許もなく気軽に誰でも乗れる便利な乗り物ですが,その分,道路交通法規を遵守していない走行が多いと感じます。もっとも,ひとたび自動車と自転車が事故になった場合,自動車の過失が大きくなってしまうことが多くあります。それだけ自動車の運転というのは,自転車の運転よりいっそう危険を伴うものであり,相応の注意義務が課せられているということです。
【文献】
1) 東京地裁民事交通訴訟研究会, 編:別冊 判例タイムズ38号「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」全訂5版. 判例タイムズ社 , 2014.
【回答者】
岡田友佑 日本橋小伝馬町法律事務所 弁護士