今年4月、国立感染症研究所の新所長に、C型肝炎ウイルス研究で名高い脇田隆字氏が就任した。訪日外国人が激増し、国際感染症流行のリスクも高まる中、感染症対策をどう進めるのか。脇田氏に所長就任の抱負と、感染症対策の課題を聞いた。
国立感染症研究所(感染研)の大きな役割の1つは、国内外の感染症のサーベイランスによって流行状況をいち早く把握し、科学的な知見を厚生労働省に提供して対策を講じることです。感染研には26の部・センターがあり、あらゆる感染症を専門とする研究者が揃っています。国内あるいは海外でどのような感染症が流行しても、スピード感を持って対応できるよう常に備えたいと考えています。
2020年には東京でオリンピックとパラリンピックが開催されますし、訪日外国人は急激に増加しています。海外から入って来る感染症に備える一方で、外国から来た人が日本で流行している感染症にならないようにするという意味でも、国内の感染症対策は重要です。
もう1つ、重要なのは、流行の可能性のある感染症について検査・診断体制を整え、各都道府県の衛生研究所で精度の高い検査・診断ができるようにサポートすることです。地域によって検査精度にバラツキが出ないように、精度管理にもこれまで通り力を入れていきたいと思います。
さらにもう1つの重要な業務はワクチンの品質管理です。ワクチンは健康な人に打つものですから、これまで通り品質管理に力を入れ、有効性と安全性の高いワクチンを提供できるようにしていきたいです。
何が次に流行るのか、予測は困難です。予測というよりは、いま世界のどこでどういう感染症が流行っているのかリアルタイムで把握し、必要に応じて海外の国へのサポートを行うとともに、日本に入ってきた時に迅速に対応できるようにしています。特に、中国、韓国、台湾などアジアの感染症研究所とは密に情報交換を行い、協力体制を構築しています。