喘息の既往があり,吸入ステロイドと長時間作用性のβ2刺激薬でコントロールされていた。数日前に風邪をひいてからウィーズが出現し,さらに夜間には呼吸困難で眠れなくなって受診した。酸素飽和度は92%とやや低下している。診察日まで1日プロカテロール吸入などで我慢して受診した。聴診器を当てると図1(サウンドスペクトログラム)のような音が聴こえた。
初回は,肺の聴診はすぐに治療方針まで決まる優れたバイオマーカー,という代表例を提示します。
まず音を聴いてみましょう。吸気音,呼気音とも大きくはっきりと聴こえます。「ぐ~」とか「ざ~」と表現されるような連続性ラ音(ウィーズ)が聴こえます。濁った音のウィーズをポリフォニック・ウィーズと呼びます。ポリフォニック・ウィーズはサウンドスペクトログラムでみると,何本ものウィーズの線が見られる(図3)のですが,今回の症例のように音が濁りすぎるとウィーズの線ははっきりとは描出されません。
このようにウィーズの音が濁っていたり,長く引っ張るような音の場合は重症の喘息発作です。治療にはステロイドの点滴が必要です。メチルプレドニゾロンで125〜250mgを使うことが多いです。アスピリン喘息では,メチルプレドニゾロンで悪化することがあると言われていますが,30分かけた点滴で悪化することはほとんどありません。また,アミノフィリンの点滴を併用するとより早く改善しますが,女性患者の場合は動悸を訴えることがありますので,少量にするか,使わないという選択もあります。