□表32)に従い,細菌性肺炎,非定型肺炎の鑑別を行う。
□耐性菌のリスクが少ない症例では,肺炎球菌,インフルエンザ菌,黄色ブドウ球菌,クレブシエラ,肺炎クラミドフィラがターゲットになるが,肺炎球菌肺炎の頻度が高いため,肺炎球菌をカバーする抗菌薬を投与することが重要である。
□以下,細菌性肺炎が疑われる場合の処方例をそれぞれ示す。
□βラクタマーゼ配合ペニシリン薬を用いる。
□レスピラトリーキノロン薬を用いる。
□在宅では頻回の投与は困難であるため,以下のように処方する。
□レスピラトリーキノロン薬を用いる。
□過去90日以内に抗菌薬の投与がなく,経管栄養も施行されていない場合,耐性菌のリスクがないと判断する。誤嚥性肺炎の場合抗菌薬の選択が異なるので,誤嚥性肺炎の可能性の有無について考慮する。
□βラクタマーゼ配合ペニシリン薬は非定型病原菌をカバーしないため,マクロライドを併用する。
□誤嚥性肺炎の可能性が高いときにレスピラトリーキノロンを用いる場合,レボフロキサシン(クラビット®)は嫌気性菌に対する作用が弱いため,ガレノキサシン(ジェニナック®),モキシフロキサシン(アベロックス®)を用いる。アジスロマイシン(ジスロマック®SR)は単回治療で完結し,細菌性肺炎,非定型肺炎のいずれもカバーできるので,レスピラトリーキノロンと同様に推奨される。耐性菌リスクが高い場合には,入院治療を検討する。
□発熱,脈拍数,呼吸数,などのバイタルサイン,SpO2,全身倦怠感,食欲不振などの症状に注意して経過を観察する。認知症を有する症例では症状を適切に表現できないため,普段と変わった様子がないか,医療スタッフ,家族が注意して観察する必要がある。
□過度の安静により身体機能が低下すると肺炎が悪化することがあるので,ADL低下に注意する。
□高齢者では抗菌薬の副作用の出現頻度が高く,副作用の出現の有無について評価を行う。
□肺炎は予防が重要である。肺炎を生じていない安定期に肺炎予防の対策をとる(表4)2)。特に口腔ケアは誤嚥性肺炎の予防に重要である。
□基礎疾患のコントロールが不良となると,肺炎に罹患・難治化しやすくなる。基礎疾患のコントロールが十分なされるように,安定期から介入を行うことが重要である。
□過度の安静により身体機能が低下しないように,症状,バイタルサイン,SpO2をモニタリングしながらADLを維持するように努める。
□喀痰の喀出困難な症例では,排痰法を指導する。
□嚥下障害や誤嚥のリスクがある症例では,安定期に嚥下リハビリテーションを実施し,誤嚥の予防に努める。
□高齢者では水分摂取が不十分で脱水になったり,服薬アドヒアランスが低下して十分治療効果が上がらないことが多い。家族の協力を得たり,肺炎治療期間中は訪問看護によるサポート体制を確保する。
□肺炎は予防が重要であることを十分に説明し,口腔ケア,誤嚥予防の具体的対策について家族に指導する。基礎疾患のコントロールが不良となると肺炎に罹患しやすくなることを説明し,自己管理が難しい症例の場合,服薬管理など日常生活の管理を家族に依頼する。
□肺炎を疑う症状,かかりつけ医や訪問看護など医療者へのコンタクトのタイミングについても具体的に説明する。
□発熱がなくても,食欲不振,全身倦怠感,意識障害などの全身症状が出現した場合は,肺炎の可能性があることを説明する。
□肺炎の病状が悪化した場合,入院を希望するのか,人工呼吸管理などの侵襲的な処置を希望するのか,安定期に家族と話し合いをしておく。
□医師,歯科医師,看護師,薬剤師,歯科衛生士,理学療法士などの多職種が連携し,基礎疾患の管理,ADLの向上,口腔ケア,誤嚥対策を行うことが肺炎予防につながるため,普段から在宅での医療チームの整備を行っておく。
□肺炎の治療中は訪問看護による定期的な介入が欠かせないが,病状が悪化した場合には,家族が訪問看護,かかりつけ医に連絡を取れる体制を確立しておく。
1) 日本呼吸器学会 医療・介護関連肺炎(NHCAP)診療ガイドライン作成委員会, 編:医療・介護関連肺炎(NHCAP)診療ガイドライン. メディカルレビュー社, 2011.
[http://www.jrs.or.jp/uploads/uploads/files/photos/1050.pdf]
2) 日本呼吸器学会市中肺炎診療ガイドライン作成委員会, 編:「呼吸器感染症に関するガイドライン」成人市中肺炎診療ガイドライン. 日本呼吸器学会, 2007.
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