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看取りのプロセスと作法[私の治療]

No.5257 (2025年01月25日発行) P.38

日下部明彦 (横浜市立大学医学部医学科総合診療医学教室准教授)

登録日: 2025-01-28

最終更新日: 2025-01-21

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  • 国民の半数以上が自宅で最期を迎えることを希望しているが,それをかなえることは難しいとも感じている。
    医師は予後予測を行い,患者・家族,多職種と共有し,急な容体変化への対策を講じる(あらかじめ本人・家族の希望を理由とともに聞いておくこと,搬送先の病院を選定しておくこと)。また,患者・家族の看取りの場所の希望は変化するものとして備える。死亡診断時の医師の立ち居振る舞いにおいては,患者・家族,多職種に十分な配慮が必要である。
    医療ケア従事者は,自宅での看取りにこだわりすぎないようにする。

    ▶状態の把握・アセスメント

    在宅医療とは,病院での医療・治療を可能な限り再現・継続するものではなく,自宅で穏やかに自律した生活が続けられることを目標とした医療・ケアを提供する医療スタイルである。医療者は,キュアを中心とした病院医療とはコンセプトが異なることに留意する。

    自宅での看取りとなるための患者・家族側の主な要素として①患者・家族が自宅看取りを望んでいる,②患者・家族が,臨死期の変化について医療者から十分な説明を受け納得している,③家族が点滴や排泄ケアを介助できる,④介護する家族が,患者の衰えを目の当たりにした際の精神的苦痛・悲嘆に耐えられる,が挙げられる。看取りの場所の希望はしばしば変化することに医療ケア従事者は留意し,そのたびに話し合い,希望に沿えるよう対応する。

    ▶主治医としてやるべきこと

    【予後予測】

    看取りの場所の選択について,患者・家族の希望を最大限取り入れて意思決定を支援するには,医師による予後予測は必須である。予後予測に基づいて,患者・家族はよりよき生活の場と最期を迎える場を検討することができる。

    医師は疾患群別の衰えのパターンを認識しておく。すなわち①がんパターン,②慢性疾患(慢性心不全,COPD等)パターン,③老衰・認知症パターンである。終末期がん患者の予後予測については,Palliative Prognostic Index(PPI)やPalliative Prognostic Score(PaP Score)等を参考にする。慢性疾患や老衰・認知症の経過は長期になる可能性が高く,予後予測は難しいが,Supportive & Palliative Care Indicators Tool(SPICT)等のツールを用い,個々の患者に適したケアを検討する。

    【急な容体変化】

    患者に起こりうる急な容体変化を具体的に予測し,患者・家族,多職種と共有しておく。がん患者であれば,起こりうる病状(出血,腸閉塞,Trousseau症候群等)を説明し,その際の対処法(まずは訪問診療の医師に連絡するなど)を確認しておく。

    「急変の可能性がある」「何があってもおかしくない」という言葉のみでは家族の不安は増すばかりであろう。

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