□被害者救済に目がいきがちであるが,加害者こそ支援を必要としている。加害者を含めた家庭全体の支援が本質的な対応である。
□虐待への対応というと特殊な技能が必要と考えがちであるが,介護保険や福祉制度を用いた通常の生活支援を誠実に行うことが支援の王道である。
□わが国には4つの虐待関係法規がある(表)。
□高齢者と障害者の法名には「養護者支援」が記されている。加害者の育児・介護負担などが虐待の背景にあること,養護者支援が重要との認識がうかがえる。
□法上の概念として,DVとは「身体的虐待」である。児童虐待とは,「身体的虐待」「心理的虐待」「性的虐待」「介護等放棄」である。さらに高齢者虐待と障害者虐待は,その4つに「経済的虐待」を加えたものである。
□以下が,法律に定められている虐待の概念である。法には記載されていないが,高齢者虐待領域では最近セルフネグレクトを虐待と認知し,支援すべきという考えが広まりつつある。
□身体的虐待(physical abuse):外傷や熱傷等を生じ得る行為はすべて該当する。身体を束縛する,閉じ込める,向精神薬等で活動を封じる,なども該当する。
□心理的虐待(psychological abuse):暴言が代表的である。拒絶する,無視する,なども該当する。その他,親しい人に会わせない,やりたいこと(活動など)をさせない,も該当する。
□性的虐待(sexual abuse):意思に反して性行為をせまる(させる),無理に体に触れる,わいせつな言葉をかける(言わせる),などを言う。高齢者施設などで(介護者多忙により)下半身を露出したまま放置することも性的虐待にあたる。
□介護等放棄(neglect):食事や水分を適切に与えない,不潔な住環境で生活させる,長時間放置する,などを言う。適切な医療を受けさせないこともこれに該当する。
□経済的虐待(financial abuse/exploitation):金銭を不当に搾取する,生活に必要な金銭を渡さない(使わせない),資産などを(本人の適切な承諾なしに)使用する,などを言う。
□セルフネグレクト(self-neglect):劣悪な環境や不潔な環境に自らを置く行為(いわゆるゴミ屋敷など)である。高齢者・障害者で孤立生活者が陥りやすい。独立した死亡因子で,支援の必要性が指摘されている。
□国民には虐待の通報義務がある。確認義務は国民にはなく,確認は通報を受けた公的な機関が行う。通報は前記各法で方法がまちまちで国民にわかりにくいシステムである。最近整備された児童相談所全国共通ダイヤル(189)(後述)もナビダイヤルシステムのため,とっさの通報に適さない。
□緊急性のある深刻な虐待に遭遇したら警察に通報する方法もよい。
□2015年7月に,365日24時間いつでも児童相談所に通報できる電話番号"189"(いち早く)が発足し,児童虐待死亡を回避するシステム強化が図られた。
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