□食道憩室(esophageal diverticulum)は食道壁の粘膜,あるいは食道壁全層が嚢状に突出した病態である。その原因,発生時期,組織学的所見,発生部位により以下のように分類されている(表)。
□X線造影検査による食道憩室の発見頻度は,0.5~1.3%との報告がある1)。
□一般には無症状のことが多く,ほとんどは上部消化管検査時に偶然発見される。わが国で最も頻度の高い中部食道憩室は臨床的に問題となることはほとんどない。
□咽頭食道憩室では憩室の増大に伴い症状が出現し,嚥下困難や逆流症状などの症状がみられ誤嚥性肺炎を合併することがある。
□稀ではあるが,穿孔,出血,癌腫の発生をみることがある。横隔膜上憩室は食道裂孔ヘルニアや食道アカラシアを高頻度に合併することが知られており,嚥下困難,逆流,心窩部痛などの食道運動機能障害に関連する症状を有することが多い。
□食道造影:X線造影検査で部位と形態を描出する。食道造影では嚢状あるいは半球状に突出する特徴的な像を呈する。憩室粘膜にびらんや食物残渣の停滞を認めることもある。下咽頭後壁より発生する憩室はZenker憩室として知られ,食道入口部の高さで後側方に突出する。気管分岐部憩室では食道気管支瘻の存在の有無を確認する必要がある。横隔膜上憩室は食道下端10cm部に嚢状の形態を呈し,右後壁に多い。
□上部消化管内視鏡:内視鏡検査で憩室は嚢状の窪みとして認められる(図)。大半は正常粘膜で覆われており,憩室に食物残渣が入っている場合もある。食道憩室と食道癌の合併例の報告もあり2),適宜ルゴール染色を併用すべきである。
□食道内圧検査:Zenker憩室や横隔膜上憩室は食道内圧の上昇が成因に関与しているとされる。食道内圧検査により,嚥下による蠕動波に引き続く上部食道括約筋(upper esophageal sphincter:UES),下部食道括約筋(lower esophageal sphincter:LES)の弛緩という協調運動の障害の有無を確認することは重要である。
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