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腸リンパ管拡張症[私の治療]

No.5252 (2024年12月21日発行) P.44

穂苅量太 (防衛医科大学校消化器内科学講座教授)

登録日: 2024-12-21

最終更新日: 2024-12-17

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  • 小腸のリンパ管に流出障害が起こり,拡張したリンパ管に乳びがうっ滞し蛋白漏出性胃腸症をきたす。原発性はきわめて稀な疾患であり,原因不明で,確立した根治療法がない。
    免疫グロブリンやCD4リンパ球の低下など,免疫不全状態になっている可能性があり,日和見感染症の罹患に留意する。
    続発性としてはFontan手術,右心不全,リンパ管周囲の病変による機械的圧迫がある。

    ▶診断のポイント

    • 診断基準を表 1)に示す。
    • 浮腫が主症状である。顔面や下肢の浮腫が唯一の症状である場合が少なくない。時に下痢や腹部膨満を生じ,重症になると脂肪便やカルシウム不足,低カリウム血症が生じたり,胸腹水が貯留したりすることもある。
    • 低蛋白血症をきたすほかの疾患(摂食不良,ネフローゼ,肝硬変など)の除外を最初に行う。
    • 腸からの喪失を直接証明することが確定診断に必須である。α1-アンチトリプシン試験は3日間の蓄便と血液試験を要し,α1-アンチトリプシンクリアランス13mL/日以上を異常とする(クリアランス=便量×便中α1-アンチトリプシン÷血中α1-アンチトリプシン濃度)。
    • シンチグラフィー:99mTcヒト血清アルブミン,99mTc-DTPA結合ヒト血清アルブミンを静注し,消化管への漏出の有無をシンチグラフィーで確認する。

    • 内視鏡所見(胃・小腸内視鏡):白色絨毛,散布性白点,白色小隆起は粘膜内のリンパ管拡張を反映し,粘膜下腫瘍様隆起は粘膜下層のリンパ管拡張を反映すると考えられている。メチレンブルー色素散布では蛋白漏出のため染色が不均一になる。
    • 組織学的所見では,D2-40染色で拡張したリンパ管を粘膜固有層や粘膜下層に認める。
    • リンパ管造影:リンパ管圧亢進に伴うものでは,下肢への造影剤注入が腸リンパ管へ逆流し,管腔内へ漏出する所見を得る。MRIを用いたリンパ管造影を実施している施設もある。

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