□トキソカラ属の回虫であるイヌ回虫(Toxocara canis)とネコ回虫(T. cati)が人に感染して起こる。
□ヒト体内に侵入したイヌ回虫やネコ回虫は,幼虫のままでヒト体内を移行し様々な病害を引き起こす(幼虫移行症)。
□ヒトへの感染は,環境中に存在する幼虫包蔵卵の経口摂取と,ウシ,トリなどの待機宿主の肝や筋肉を生で摂取することによる。
□トキソカラ症は内臓型,眼・中枢神経型,潜在型の病型にわけられる。また,これらの典型的な病型のほか,多彩な病態が存在する(非典型例)。非典型例はトキソカラ幼虫の直接浸潤とアレルギー様あるいは自己免疫反応が原因と考えられている。
□ヒトに摂取されたトキソカラ幼虫は,腸管から血行性に全身諸臓器に散布される。内臓型トキソカラ症では,肺病変と肝病変が主である。
□肺病変は内臓型トキソカラ症の20~85%にみられ,咳,喀痰,胸痛,呼吸困難,喘鳴など非特異的な呼吸器症状がみられる。無症状の症例も存在する。
□肝病変は抗トキソカラ抗体陽性患者の35~68%にみられる。無症状の症例と腹部不快感,腹痛,発熱,倦怠感など非特異的な症状が報告されている。
□眼トキソカラ症の主な症状は,飛蚊症,眼痛,眼の充血,羞明である。
□ほとんどが片眼発症であり,両眼発症は40%未満と少ない。
□中枢神経型トキソカラ症は,稀な病態である。好酸球性髄膜炎,脳炎,髄膜脳炎,血管炎,脊髄炎の報告がある。
□抗トキソカラ抗体陽性かつ軽微な症状(慢性的な脱力感,眼瞼結膜や皮膚のそう痒感といったアレルギー様症状,びまん性筋痛,血管神経性浮腫,小児の睡眠障害や行動異常など)を伴うものである。
□皮膚病変(蕁麻疹と結節性病変),心筋炎,血管炎,アレルギー性紫斑病,リウマチ様症状などが報告されている。
□診断は,臨床所見(症状,画像所見,末梢血好酸球増多やIgE上昇),患者背景(食習慣,ペット飼育)と免疫診断の結果を合わせて総合的に判断する。
□末梢血好酸球増多。
□肺病変は,胸部CT上の多発小結節影±GGO halo,focal GGOが多い。
□肝病変は,腹部超音波検査で肝実質内に多発する小さな低エコー域として描出される。腹部CTでは,直径1.0~1.5cm程度の多発小結節が楕円形の低吸収域として描出される。造影CTは,門脈相で観察するのがよく,病変辺縁の造影効果に乏しい。
□眼トキソカラ症は,病変部位によって周辺部腫瘤型,後極部腫瘤型,眼内炎型に分類される。必ずしも末梢血好酸球増多を伴わない。
□中枢神経型は,臨床所見,疫学的背景(食習慣,ペット飼育),末梢血中あるいは髄液中の好酸球増加と抗トキソカラ抗体の存在,画像所見によって診断される。
□好酸球増多の程度は低い(1500/μL)か,正常範囲内である。
□末梢血好酸球増多,抗トキソカラ抗体陽性。
□トキソカラ症の典型的な症状に当てはまらない場合でも,ウシ,トリの生食歴があれば免疫診断を考慮する。
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