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肝吸虫症

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-07-21
太田伸生 (東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科国際環境寄生虫病学教授)
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  • ■疾患メモ

    肝吸虫(Clonorchis sinensis)が肝胆道系に寄生して起こる疾患である。中間宿主として特定の淡水産巻貝を必要とするので,中間宿主貝の分布域に発生が限られる風土病の性格を示す。わが国では,河口近くの沖積平野地帯に分布するマメタニシの生息域と一致してみられていた。

    食品媒介感染症である。日本,韓国,中国などの淡水魚の生食嗜好がある地域では肝吸虫による感染がみられるが,最近では,症例発生の報告は少なくなった。しかしタイ東北部~ラオスのメコン川流域では,タイ肝吸虫(Opisthorchis viverrini)による肝吸虫症の濃厚流行地が存在するので,輸入感染症として注意する必要がある。

    感染経路は,第2中間宿主となる淡水魚の生食/不完全調理による摂食である。

    胆管がんの原因となることが知られている(International Agency for Research on Cancer,WHO)。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    ヒト体内で組織侵入性がなく胆管内にとどまるため,少数寄生では無症状で経過することが多い。多数寄生では右季肋部痛,悪心,嘔吐,腹痛,食思不振などの自覚症状のほか,肝腫大,胆管炎症状なども伴う場合がある。

    【検査所見】

    一般的な寄生虫症スクリーニング検査では見落とされることが多く,診断は必ずしも容易ではない。診断のためには検便で虫卵()を確認するが,1匹の成虫の産卵数は多くないため,検便の感度は高くない。そのため,必ず集卵法で検査するべきである。血清診断も可能であるが,軽度感染では抗体価はあまり上がらず,感度は良くない。病理解剖の際に偶発的に発見されるケースもある。

    13_12_肝吸虫症

    虫卵は形態学的に横川吸虫卵との鑑別がやや困難である。

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