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伝染性紅斑(リンゴ病)

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-06-20
五十嵐敦之 (NTT東日本関東病院皮膚科部長)
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  • ■疾患メモ

    ヒトパルボウイルスB19(HPV-B19)による急性ウイルス性発疹症で,頬部の紅斑が赤いリンゴを思わせる様相を呈することからリンゴ病ともいわれる。

    HPV-B19の標的細胞は赤芽球系前駆細胞から後期赤芽球で,感染経路は飛沫感染で不顕性感染がある(欧米では約25%,わが国では約10%と推定)。

    流行周期はほぼ5年ごとといわれるが,1973・81・87・92,97,2001,07,11,15年に流行している。風疹の流行とほぼ一致するが,本症を風疹と誤診しているためともいわれる。

    発症は通年性であるが冬から春にかけて多く,成人では小児に接する機会が多い女性に好発する傾向がある。

    一度感染すると終生免疫を獲得する。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    潜伏期間は7~11日で,はじめに全身倦怠感,咽頭痛,筋肉痛,発熱,鼻水,嘔吐,下痢などの感冒様症状が出現するが,小児では軽い。

    その約1週間後に皮疹が出現する。両頬部に熱感を伴う深紅色紅斑を生じ,あたかも平手打ちをされたような様相を呈する(図1)。鼻根部で左右の皮疹が連なり,蝶形紅斑様となることもある。顔面の皮疹が出現して1~2日後に上腕伸側,ついで前腕,手背に爪甲大の斑状紅斑が生じ,融合して中央から退色して網目状,レース状の紅斑となる(図2)。その他,大腿部,稀に体幹にも皮疹が出現する。しばしばそう痒を伴う。被髪頭部には皮疹はみられない。

    14_36_伝染性紅斑(リンゴ病)

    成人が罹患した場合,皮疹は非定型的で,麻疹,風疹様の紅斑,関節部の浮腫性紅斑などを呈するが,紅斑を伴わない手足の浮腫性腫脹は比較的成人では特徴的と考えられる。皮疹出現からやや遅れて生じ,疼痛をしばしば伴う。また関節炎は成人70%程度に肘,膝,手首などに対称性に認められ,朝の手指のこわばりを見ることもある。筋肉痛,全身倦怠感などの症状も強く,重症例では肺炎,胸水貯留をきたすことがある。頸部リンパ節腫脹がみられることがあるが,風疹ほど顕著ではない。

    皮疹は出現5~10日後に四肢から先に消退していく。これらの皮疹はいったん消退した後,入浴,日光や緊張などで再燃することがあり,再燃は皮疹消退後も1~4週間続くことがある。

    【検査所見】

    一般検査ではウイルス感染1週間後には汎血球減少や異型リンパ球の出現を見るが,皮疹の出現した時期は既に回復していることが多い。時に血小板減少,白血球減少,AST・ALT・LDH上昇を見る。

    HPV-B19に対する血中IgM抗体価は感染後7~10日で上昇し,その後1~2カ月で低下,検出されなくなるが,IgG抗体は感染2~3週で上昇し,かなり長期間陽性を保つ。IgM抗体が検出されれば本症の初感染と診断できる。IgG抗体の場合はペア血清で4倍以上の上昇の確認が必要となる。保険上は現在のところ妊婦のみにIgM型ウイルス抗体価測定が認められている。

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