□強迫症(obsessive-compulsive disorder:OCD)は,一般人口中の生涯有病率が1~2%程度,男女比はほぼ同等で,平均発症年齢は男性がより若年の傾向であるが,20歳前後とされている。
□OCDは,侵入的で不適切なものと認識される持続的な思考,衝動,またはイメージなどの強迫観念と,手洗いや確認,心の中の行為などの繰り返しの行動(強迫行為)からなり,通常両者は併存する。すなわち,強迫行為の多くは観念に伴い増大した不安の緩和や中和化,あるいは苦痛の予防などを目的としている。
□OCDの診断では,これらが強い苦痛を生じていること,時間を浪費させていること(通常は1時間以上),日常や社会的,職業的機能に著しい障害をきたしていることなどが必須である。
□日本人によくみられる強迫症状とその割合を表に示した。通常以下1)のような行為を伴う。
□汚染の心配(細菌やウイルス,排泄物,ゴミなどに関するもの等)による過剰な手洗いやシャワーなどの洗浄行為。
□車の運転中や歩行中,不注意から誰かを傷つけていないかと心配し(攻撃的な観念),あるいは仕事などの正確性にこだわり,繰り返される確認行為。
□完璧な左右対称など「まさにぴったり」感の追求から,納得できるまでものを整頓したり,やり直したりする儀式的行為。
□"4"や"9"などの不吉な数字へのこだわりと,数を数える行為。
□不吉感や性的,あるいは宗教的な考えや想像へのとらわれ。時に呪文やお祈りなど心の中の行為を繰り返す。
□家族に「大丈夫か」と繰り返し保証を求めること,強迫行為を強要すること,あるいは代行させること,などの巻き込み行為。
□OCDの重症度評価には,半構造化面接法のYale-Brown Obsessive-Compulsive Scale(Y-BOCS)を用いる。この得点が16点以上であれば臨床的に有意な強迫症状と考えられ,32点以上の場合,きわめて重度と判定される。
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